昨年10月の武道館公演をパッケージした『(B)』、『kikUUiki』ツアー最終日・新木場スタジオコーストのライブ映像＝『(C)』の雄大な響きはそのまま、サカナクションがーーというか山口一郎が、サカナクションというイメージに追いつき追い越していく過程で獲得した怒濤のスケール感そのものだった。自問自答と葛藤を強烈なロックとダンス・ビートに託してきた彼らが、その音楽が巻き起こす波紋まで含めて自分の表現として支配した2010年という瞬間を、今作は克明に捉えている。そして『(D)』の、武道館やツアーの密着＆ドキュメンタリーに加えて収録された、山口＆江島のインタビュー映像。レコーディング期限ぎりぎりで行われた“目が明く藍色”の制作とそれにまつわるプレッシャー、その中で貫き通した闘志、それによってバンドが迎えた覚醒……といった重要な局面を、夜釣りの風景の中で淡々と語る2人の姿に、もう一度胸が熱くなった。『(D)』込みの3枚組で観ることで、ロック最先端を牽引する存在へと成長を遂げたサカナクションの音楽が3Dばりの立体感をもって脳内に蘇る名作。（高橋智樹）