もちろん「踊れる」のは大前提

チック・チック・チック『ストレンジ・ウェザー・イズント・イット?』
2010年06月23日発売
ALBUM
チック・チック・チック ストレンジ・ウェザー・イズント・イット?
インタビューでニックが語っていたが、ここ数年で!!!は内面的にも外面的にも大きく変化を遂げた。メンバー・チェンジ、元ドラマー=ジェリーの死、もちろんアメリカにおける政治的状況の変化(もしくは「何も変わらなかった」という事実)もあいまって「変わらずにはいられない」状況にあったのだ。前作『ミス・テイクス』はいま聴き返しても彼らの最高傑作だと思うが、あのアルバムの何が凄かったのかというと、ライブの熱狂と興奮が知性によって完璧にコントロールされていたところだ。それに対して本作は、訪れた変化を俯瞰しつつ、新たなダイナミズムを探索していくようなアルバムとなっている。音の位相や反響音の使い方まで、徹底的にディテールに踏み込んだ音響処理や、BPMを落とし気味にし、ピアノやキーボードのサウンドをフィーチャーすることであえて前面に押し出したメロウネス。エレクトロやディスコの要素も入ってきて、本作には洗練されたファンクネスと混沌としたダンス・ミュージックの現場感覚が入り混じる。過渡期といえば過渡期、しかしそこには新しいものに手を伸ばそうという確固たる意志がある。(小川智宏)
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