2010年02月10日発売
ドキュメント「愛の理論と実践」
HIM
『スクリームワークス:ラヴ・イン・セオリー・アンド・プラクティス』
ALBUM
WPCR-13801
WARNER MUSIC JAPAN
約2年半ぶり、通算7作目となるHIMの新作は、愛の喪失から生まれた前作『ヴィーナス・ドゥーム』のどんよりとした空気とは対極にある溌剌としたエネルギーに満ちている。酒を断ち、新たな愛に出会ったヴィレ・ヴァロが今回目指したのはガンズ・アンド・ローゼズとデペッシュ・モードの融合であり、拭いきれないメランコリーの中にも弾む鼓動が、ポップなシンセが、キャッチーなメロディが、堂々と前に出て自己主張している。先行シングルの“ハートキラー”をはじめ、前々作『ダーク・ライト』に通じる開かれたポップネスが印象的だ。
しかし、だからと言ってハッピー・アルバムでは決してないのがHIMのHIMたる所以であって、ここでは愛の成就も心の平安も歌われてはいない。結局のところ、ヴィレはインスピレーションのために愛を必要とするも、曲作りを始めると音楽に没頭するあまり実際の恋愛関係を疎かにしてしまうという、何とも因果な性を持つ人なのだ。ラスト曲のエレクトロなアレンジと反復的な曲構成が新鮮で、アルバムごとに新たな定義を加えるラブ・メタルの進化と未来も感じさせる。(網田有紀子)
2010.02.08 up