2010年02月10日発売
言葉とメロディの幸福な関係
矢野顕子
『音楽堂』
ALBUM
YCCW-10108
YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS
近年は若い世代とのコラボも増え、改めてその天才性に注目が集まる矢野顕子。本作は、92年の名盤『SUPER FOLK SONG』からスタートしたピアノ弾き語りシリーズの第4弾である。神奈川県立音楽堂で5日間、名エンジニアの吉野金次氏とともに録音された全15曲。ここには、ピアノと歌声が織りなす、奇跡としか言いようのない音楽空間がある。
収録曲中12曲はカバーだ。くるり、エルレからポンキッキーズの曲まで選曲の幅は広いが、共通するのはどれも必殺の一行を持つ歌という点であろう。矢野顕子のカバー手法は、歌詞が描く情景の骨格を捉えた上で、そこにメロディで自在に色彩を加えるというもの。通常、ピアノやギターによる弾き語りは原曲よりもシンプルな印象を与えるが、彼女のカバーにおいては言葉のまわりに豊かなメロディが沸き立ち、歌のイメージがより重層的に広がっていく感覚がある。
その中で異彩を放つのは、闘病中の清志郎に捧げられた新曲“きよしちゃん”だ。ワンフレーズを繰り返すこの曲には、いわばモノトーンの凄みがある。そこに彼女の思いの深さを感じた。(神谷弘一)
2010.02.08 up