我歩く、故に我在り

サカナクション『アルクアラウンド』
2010年01月13日発売
SINGLE
サカナクション アルクアラウンド
いくらだって威勢のいい言葉を載っけてかっ飛ばせそうな爆発力のあるハイブリッドなビートとトラックに、なぜ山口一郎は《僕は歩く ひとり淋しい人になりにけり》と夜の孤独と内省をありったけ心の中からえぐり出して爆走させずにいられないのか。《大人になれたら僕は宇宙》(“セントレイ”)と堂々と歌い上げ、今年の夏フェス殊勲賞的な存在として絶賛される精鋭=サカナクションの約1年ぶりの新曲で、なぜ彼らの心は《何を探し回るのか 僕にもまだわからぬまま》と不安に彷徨いっ放しなのか。この曲にはまさに、そんな彼らの唯一無二のリアリティがまざまざと焼き込まれている。勇ましいファンファーレのようにすら響くシンセ・リードのメロディも、タイトに大地を震わす4つ打ちビートも、「今、ここ」を生きる僕らに真っ直ぐ向いている。というか、このビートとともに街を闊歩すべきなのは「ダンス・フロアの享楽」という名の妄想などではなく、孤独と苦悩と人恋しさに苛まれっ放しの僕ら自身である……ということを、この音が厳然と告げている。この世界は、僕らが歩むべき場所なのだ。(高橋智樹)
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