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言葉は人と人の間でやり取りされるものでもあるが、ひとりの人間の内側を縦横無尽に行き交うものでもあったりして、出たり入ったり、出ようと思って出なかったり、変なところで出たりして……。そんな「言葉」というものの軌道が見えてくるような歌詞だ。ドラマ『滅相も無い』の主題歌ということでドラマのテーマである「仏教」や「穴」というモチーフもちりばめられているが、それもクリープハイプらしく料理されている。人と人の間に生まれるズレと、そのズレからそこはかとなく滲んで香るロマンティシズム。後半に現れる《今夜2人は出会うから 何度でもまた出会う》という部分が、神様の視点が入り込んできているようでドキッとする。サウンドはバンドの肉体感を強く感じさせる。“イト”を想起させるホーンも印象的だが、それが主役というよりはむしろギター、ベース、ドラムによるバンドサウンドのダイナミックさを後押しする形になっている。バンドが今オーガニックにいい状態であることを感じさせる1曲だ。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年6月号より抜粋)
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