あなたの歌でもあるけれど

クリープハイプ『もうすぐ着くから待っててね』
発売中
EP
クリープハイプ もうすぐ着くから待っててね
新曲4曲+1曲に、連なった物語があるとか、何か共有するコンセプトがあるというわけではない。それぞれが独立した背景と曲調を持つ楽曲の作品集であり、1曲1曲が胸の奥を鷲掴みにして、余韻を残しながら吹き抜けてゆく。もしかするとクリープハイプ史上もっともポップな作風に取り組んだ1枚なのかと思ったが、3曲目の“は?”がすこぶる攻撃的に突き抜けたナンバーだったりする。アルバム『世界観』はバンドとしてのエッジの鋭さが際立っていたが、それを凌ぐほどだ。そして、尾崎が《ごめんね》と歌うたびに憎めなさが募るその最新版“ただ”。美しく歪んだサウンドスケープの中で一生モノの原風景を見せてくれる“校庭の隅に二人、風が吹いて今なら言えるかな”。さらに“陽”は、オリジナルバージョンと谷口鮪(KANA-BOON)参加バージョンの2を収録。鮪だけでなく多くの人が口ずさむはずの1曲だが、《今を大好きになる》ことを願うだけでもこれほどの思考を要するのだ、という歌詞に、尾崎の揺るぎない存在感を見る。誰が歌ってもクリープハイプ作品と化すスタンダードだ。(小池宏和)
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