本国では16年夏にリリースされ英国で最も売れたデビュー・アルバムとなった本作は、間違いなく16年のUKロック最大の成果のひとつであり、ギター・バンドの希望を未来に繋いだ超重要な一枚だ。半年遅れの日本盤リリースだが、ここはもう待望の初単独来日に合わせた凱歌として打ち鳴らしたい気分だ。ブロッサムズが画期的だったのは、古典的インディ・ロックの文体で今なお十分にモダン・ポップが書けると証明したこと。オアシスのビッグ・メロディ、スミスやプリファブ・スプラウトのリリシズム、ドアーズやエコバニのサイケデリック等々が詰め込まれたインディ・ギター総力戦と呼ぶべき本作は、出世曲“アット・モスト・ア・キス”以降に露になったデペッシュ・モード調エレクトロ・ポップ、ニュー・オーダー的ダンス・ビートとの融合によって、一気にビッグ・スケールを獲得。しかもアルバム全12曲中なんと8曲（！）がシングルという点にも明らかなように、彼らは完全な確信犯であり、THE 1975以降のUKギターの特徴である健全な上昇志向、当たり前に勝ちにいくしたたかさを兼ね備えている点も強い。（粉川しの）