完璧ではない人間の象徴としての高橋優のテーマソング“Mr.Complex Man”。不揃いな者同士が補い合えば1にもなれると歌う“君の背景”。爽快なロックサウンドに乗せて心の痛みと優しさとの関係性を描く“アイアンハート”。ストリングスの豊かなフレーズとともに「君」のことを柔らかに肯定するバラード“BEAUTIFUL”――と、約2年ぶりのオリジナルアルバムには全12曲を通して「あなたの背負ってきたすべてを理解できるわけではない」という前提と、「それでも一緒に笑いたい」という願いが描かれている。

抱きたくない嫌悪感を抱いては悩み苦しむこともある生活の中で、「わかり合えなくてもいいんだ」と歌う歌に救われる人は少なくないはず。2013年リリースのアルバム『BREAK MY SILENCE』以降、音楽の中で己を曝け出し続けてきた彼だからこそ、他者の意思表示を尊ぶことができるし、たったひとりのあなたのことを否定しやしないのだ。闘いの中で彼が掴み取ったものが、同調も同情も超えた先に咲くポップソングであることを嬉しく思う。（蜂須賀ちなみ）