歌の寿命を賭けたゲーム、開始

トゥー・ドア・シネマ・クラブ『ゲームショー』
発売中
ALBUM
トゥー・ドア・シネマ・クラブ ゲームショー
半ば律儀な挨拶とも取れたメジャー進出EP『チェンジング・オブ・ザ・シーズンズ』ののち、トゥー・ドア・シネマ・クラブはバンド表現の抜本的な改革に向かったのだろう。長い沈黙期間があり、3年ぶりのサマソニ出演の報や唐突な新作ティーザー公開を経て、遂に3枚目のアルバムが届けられる。トゥー・ドア・シネマ・クラブは恐らく、現代的なダンス・ビートの上でロックすることに、彼らなりの限界を感じていたのだと思う。その道をストイックに突き詰めた彼らだからこそ、感じることができた限界である。

児童コーラスに包まれて走り出した先行シングル“アー・ウィ・レディー?(レック)”の挑発的でどこかワイルドな手応えや、プラスティック・ファンクに乗せて野心を練る“バッド・ディシジョンズ”からしても、彼らのロックが表現衝動とサウンドの肉体性をアップデートしていることが分かるだろう。本作はデヴィッド・ボウイやプリンスらという、旅立ったスター達に影響されたというアナウンスもあるが、表題曲“ゲームショー”は『ロウ』期のボウイを思わせる実験的かつ強力なグルーヴで、新作ティーザーの中で聴こえていたアーシーなギター・サウンドは“フィーバー”に含まれている。トゥー・ドア・シネマ・クラブは、現代の情報の速さの中で、歌が聴き流されることに危機感を覚えたのではないか。グルーヴを改革し、時の流れに抗おうとしたのではないか。

プロデューサーは前作から連投のジャックナイフ・リー。バンド改造も込みのグランド・デザインが元からあって彼を起用していたとするなら、心底ビビるがどうだろう。(小池宏和)
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