ファースト・アルバム以前からこのバンドに興味を持っていた者からすれば“オール・フォー・ワン”も堪えられないほど魅力的だった。それからわずか数週間。2016年型ストーン・ローゼズ第2弾として発表されたこの曲は、掛け値なしですべての音楽ファンに聴いてほしいトラックとなった。70年代独ロックのハンマー・ビートとヒップホップ・グルーヴの融合のようだった“フールズ・ゴールド”路線を継承しつつ、セカンド・サマー・オブ・ラヴの終わりを告げていたかのような、そこにあった諦念成分がほとんどない。彼らの曲で、ぼくが最も好きなものは、あれからこれに今変わった。＜（キリストの）十字架刑などなかった／ここにあるのは心を盗む嘘だけ＞。この歌いだしの、すさまじさ。PiLの“レリジョン”に迫る、そして“アイ・アム・ザ・レザレクション”の歌詞を自らのりこえていく意志さえ感じさせる。アルバムを待つなんて20世紀みたいなことしなくていい。＜It's a beautiful thing/that I say bye bye＞、＜It's a beautiful thing/So I stay so high＞。なんて素敵な韻文だ。これを聴けただけで、彼らが復活した意義あり！（伊藤英嗣）