キング・リチャードの帰還

リチャード・アシュクロフト『ジーズ・ピープル』
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ALBUM
リチャード・アシュクロフト ジーズ・ピープル
たっぷりと余韻を湛えながら楽曲を主導するストリングス、幾重もループする旋律とコーラスの聖歌にも似た響きがもろに“ビター・スウィート・シンフォニー”を彷彿とさせる先行シングルの“ディス・イズ・ハウ・イット・フィールズ”を耳にして胸躍らせただろうあなたの期待に見事に応える。これぞキング・リチャードのカムバック作だ。6年前の前作『ジ・ユナイテッド・ネイションズ・オブ・サウンド』が、3度目にして恐らく最後のヴァーヴ解散を迎えたリチャードが「脱ヴァーヴ」を目指した結果として、ヒップホップやアーバン・ソウルを取り入れた異色作だったのに対し、本作はヴァーヴからソロへ、25年近い波瀾万丈の歳月がようやく一本の線で結ばれた感慨に満ちた1枚なのだ。4つ打ちディスコを大胆に取り入れた“アウト・オブ・マイ・ボディ”のような新機軸のナンバーと、クラシックなリチャード節が見事に融合した本作は、ノエル・ギャラガーのソロに限りなく近い意味を持つ一作と言ってもいいだろう。〈またナンバー・ワンになりたい〉と歌うタイトル・トラックの一節に、本作に全身全霊を傾けたリチャードの本気を見る思いだ。(粉川しの)
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