無二を極め続けること

ビーチ・ハウス『サンク・ユア・ラッキー・スターズ』
発売中
ALBUM
ビーチ・ハウス サンク・ユア・ラッキー・スターズ
前作『ディプレッション・チェリー』リリースから2ヶ月弱という驚異的に短いインターヴァル(=米盤発売タイミング)で登場した6作目。ゆえに「同セッションから漏れた未発表曲集では?」とつい邪推したくなる気持ちも理解できるが、独立した1枚として成り立っているのでご安心を。美メロで知られるバンドとはいえ、ここでもM4、M7、M9をはじめ際立って美しい楽曲が惜しみなく並んでいて、水準は高い。むしろこの2作連続リリース──商業的に言えば決して賢い選択ではない──は過去1、2年に高まっていた彼らのクリエイティヴな波の率直な記録なのだろう。

スロー・テンポ&アンニュイでミニマルなドリーム・ポップというビーチ・ハウス/ファン双方の快適ゾーンに留まったこのアルバムは、もちろんラディカルな変化作ではない。だが、例えばギャラクシー500やマジー・スター、ロウのように、彼らにしか生み出せない確固たる「世界」を持つバンドというのもいる。一芸に秀でた職人の技と呼んでもいいだろうし、その深まりや細やかな変化を楽しむのもありだと思う。ビーチ・ハウスは、そんなレアなバンドではないかと思っている。(坂本麻里子)
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