ぼく宛の遺書は、すさまじき大衆音楽

スガ シカオ『THE LAST』
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ALBUM
スガ シカオ THE LAST - 『THE LAST』初回限定盤『THE LAST』初回限定盤
すごい。アル中だった父の記憶とその人の震える手が、音楽に人生を賭すことを決めた「ぼく」の背中を押したあの日を愚直なまでの筆致で綴った“ふるえる手”に始まり、歌うたいとして生き抜こうとしている今の「ぼく」が自らを鼓舞し、それが聴き手へのエールにも変容する“アストライド”で終わる全11曲。まるで、遺書のような作品だなと思った。同時に、49歳の「ぼく」は、これからどんな音楽像もまとっていけるだろうとも思う。スガ シカオにとって実に6年ぶりのオリジナルアルバムは、彼の人生と音楽をめぐる執念についての手紙であり、彼だからこそ創造できた鋭利でセンセーショナルなポップミュージック集でもある。鬼気迫る様相でストイックに自らの骨身を削り落とし、最後に残ったコードとリズムとメロディとワードの欠片で構築された歌の切れ味に気圧される。ジャンルの呪縛から解き放たれていながら、やはり剥がれ落ちない皮膚感覚の発露として濃厚に表出しているファンクやソウルミュージックの血潮にも、スガ シカオの業を目の当たりにする。本当に、ただならぬ大衆音楽家である。(三宅正一)
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