あそこまで「描き切った」アルバムの次にどんな楽曲を提示するか予想がつかなかったが、それは初期を思わせるミディアムのロックサウンドに永遠に結ばれることのない相手への熱情を乗せるラヴソングだった。
ちなみに“至上の人生”というフレーズは“NIPPON”にも登場する。椎名の熱心なファンは、この楽曲を聴いて名曲“メロウ”などを想起することも少なくないだろうし、そしてコード感やアレンジ、歌に宿っている切実な様相に触れて、彼女がかつて敬愛を表明していたレディオヘッド(トム・ヨーク個人と言ったほうが適切かもしれない)の“クリープ”との類似性を見出だす人もいるだろう。
“至上の人生”はドラマ『○○妻』の主題歌に起用されることを前提に書き下ろされたもので、タイアップに関しては作家として全力でクライアントの要求に応える椎名だが、同じくドラマ主題歌である“ありあまる富”がそうであったように、この楽曲もまたいつか椎名がリリースする新たなオリジナル・アルバムの重要なピースになる気がしてならない。(三宅正一)