今、邦楽バンドシーンも変化しつつある。ということについて(ロッキング・オン・ジャパン最新号『激刊!山崎』より)

今、邦楽バンドシーンも変化しつつある。ということについて(ロッキング・オン・ジャパン最新号『激刊!山崎』より)
今月号の表紙はSaucy Dog。
才気あふれる若きトリオバンド。陽の光を浴びて、草むらに無造作に座ってリラックスした表情をしている。もうそれだけでポジティブなバイブスを放っていて、希望を感じてしまう。
サウシーいい。そして、バンドが表紙のJAPANはやっぱいい。
ブルーハーツからSaucy Dogまで、ミッシェル・ガン・エレファントからKing Gnuまで、Hi-STANDARDからマカロニえんぴつまで、あらゆるロックバンドを表紙にし続けてきたJAPANではあるが、ビジュアル的にはソロに比べてバンドのほうが表紙にするのは難しい。
それは写真のアングルの問題で、JAPANは雑誌だからサイズが縦長で、ソロアーティストやバンドのボーカルのソロカットは縦の構図に収まりやすいけど、バンドだとどうしてもバランスが難しい。
だからバンドのオフィシャルのアーティスト写真って横長がほとんどなわけで、でも、JAPANはバンドを縦でしっかりと捉えて表紙にする、ということに命をかけている。
先々月号の真っ赤に染まったKing Gnu表紙も、今月号のラフで自然体なSaucy Dog表紙もかなりの到達点だと思うんだけど、どうでしょうか。やっぱいいよね、バンドが表紙のJAPAN。
コロナでバンドのライブができなくなって、それどころかメンバーが集まってリハすることすらできなくなって、フェスも開催できなくなって、バンドシーンが止まってしまった時期がしばらくあった。その影響もあって、音楽シーン全体がここ2年で大きく変わった。
YOASOBIやAdoや優里の楽曲がバイラルチャートから大ブレイクしたのは、サブスクやTikTokやSNSによる音楽環境の大変化によるところも大きいけど、バンドシーン、ライブハウスシーンが止まってしまったということも非常に大きいと思う。
ところが、そんな今の状況の中で、再びバンドシーンも再び新たな勢いをつけてきているのを感じる。SUPER BEAVERもマカロニえんぴつもその代表だ。Saucy Dogもそうである。
サウシーの楽曲を聴いたりライブを見てて思うのは、「コロナ以前」のバンドシーンほどライブでの盛り上がりやバンドコミュニティに頼っていなくて、逆に楽曲に関してはどこからどう切り取られてどう拡散されても魅力を放つ普遍的なメロディーを持っている、ということ。完全にバイラルチャート時代に対応している。そこがすごく頼もしい。
YOASOBIの「夜に駆ける」や優里の「ドライフラワー」、Adoの「うっせぇわ」などによって、大昔の歌謡曲時代やちょっと昔のJ-POP全盛時代のようにいわゆる「楽曲が独り歩きする」ほどの国民的超メガヒットが次々に生まれる時代が再び始まっている。サブスクやYouTubeやSNSによって、万人に刺さる普遍的な楽曲というものが成立する時代を再び迎えつつある。バンドシーンも、そこに向き合おうとしているのを感じる。メロを磨き、言葉を磨き、デビューしてからさらにメロを磨いて言葉を磨いて、TwitterもインスタもTikTokもEggsも目一杯回して、少しでも楽曲が多くの人たちに届くために精一杯頑張っている。ライブに全力を尽くして、ライブハウスに来るお客さんのことだけを一生懸命考えればよかった頃とは、やはり変わったのだ。進化しているのだと僕は思う。SUPER BEAVERやマカロニえんぴつやSaucy Dogはそれを証明しつつあるのだと思う。(山崎洋一郎)

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