クラシックというよりポップでありソウルである、岸田繁の『交響曲第一番』について

クラシックというよりポップでありソウルである、岸田繁の『交響曲第一番』について
くるりの岸田繁が作曲した『交響曲第一番』の初演がCDアルバムとしてリリースされた。
ロック・バンドのヴォーカリストが長尺オーケストラ作品を書き下ろし、それがアルバムとして発売されるという前例は、日本では聞いたことがない。
思いつきや生半可な姿勢では絶対にできないことで、岸田自身もかなり長い期間、恐るべき集中力と持続力でこのプロジェクトに取り組んできた。それがようやく完成し、京都市交響楽団による演奏で初披露され、それが作品としてCDとなったわけである。


この作品はどこからどう聴いてもジャンルとしてはクラシック音楽だが、本質的にはポップ・ミュージック、ポップスである。
楽器やアンサンブルという意味でははオーケストラ作品だが、その中に注入されたアイデアやテイストやフィーリングやエモーションはまったく「クラシック(古典的)」ではなく「コンテンポラリー(今日的)」なもので、言ってみれば、くるりの最新作『THE PIER』と同じく、曲の「感情の初動」を極めて客観的なプロデュース感覚によって正確にパッケージしたポップ作品なのである。

その曲が京都市交響楽団によって演奏されて初めて、クラシックともポップスとも呼べない豊穣なソウル・ミュージックになっているところがこのCDの最大の聴きどころだ。
(山崎洋一郎)


ロッキング・オン・ジャパン最新号、岸田繁インタビュー記事のリード文より


岸田繁のJAPAN誌でのコラムをまとめた単行本『石、転がっといたらええやん。』は本日発売、そして岸田繁のインタビューを掲載したロッキング・オン・ジャパン最新号は5月30日発売です。
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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