今年の音楽シーンを振り返って思うこと

今年の音楽シーンを振り返って思うこと
(発売中のロッキング・オン・ジャパン掲載、コラム「激刊!山崎」より転載)
 

2016年の音楽シーンを総括するのはちょっと気が早いんですが、まあ今月号にはもう来年のカレンダーも付けたことだし、いろいろ思うことが積み重なってきたのでちょっと書いておこうと思います。

 今年もいい新人さんがたくさん登場したり、アジカンが20周年で盛り上がったり、はたまたバンプ・オブ・チキンやSEKAI NO OWARIやback numberが巨大規模のツアーで全国を盛り上げて回ったり、各地のフェスも活況を呈して、音楽シーンはいい感じで盛り上がってここまできました。



 そんな中でも、特にみんなの注目を集めた大きな出来事がいくつかありました。



 まず思いつくのは、今年最大の話題の曲、”前前前世“を大ヒットさせたRADWIMPSですよね。
個人的には新海誠監督もラッドも好きだから当然『君の名は。』には期待も注目もしていましたが、ここまで国民的な大事件になるとは正直予想できてはいませんでした。40代前半の新海誠監督と30代前半のRADWIMPSのタッグがこれだけの強力なコンテンツを生み出したことに希望を感じずにはいられません。RADWIMPSのニュー・アルバム『人間開花』も素晴らしい。やはり2016年の音楽シーンの最大のトピックはRADWIMPSだと言っていいと思います。

 そしてもうひとつ、2016年の大きなサプライズ的な出来事と言えばHi-STANDARDのなんの前触れも事前告知もない突然のシングル・リリース!ですよね。
このSNSの時代に一切の情報バレもなく突然店頭にCDが並び、そこから一気に広がった情報で一瞬にしてチャートの1位に上り詰めるという、奇跡のようなことを現実に起こしたのが今年のハイスタだったのです。メディアに頼らない、という意味で実にパンクな出来事だったとも言えるし、人々をCDショップに走らせた、という意味では忘れかけていた興奮を思い出させてくれる出来事でもありました。そしてこのシングルの4曲がまた、いいんだ! やっぱりホンモノは違う、といろんな意味で思わせてくれた事件でした。

 
宇多田ヒカルの8年ぶりの新作『Fantôme』はそのリリース自体が2016年の大きなひとつの事件と言えると思いますが、もっと驚いたのはそのディープな内容と、深くて重いにもかかわらずセールスが50万枚を超えたという事実でした。
8年というブランクは、音楽シーンの変化のスピードの中ではとてつもなく長い年月です。そのブランクを経て、特に大きな仕掛けや派手な露出をするわけでもなく、その作品の力だけで今年最大級のアルバム・セールスを記録するなんてことは宇多田ヒカルだからできたことです。そしてそれは宇多田ヒカルのネームバリューということではなく、言うまでもなく宇多田ヒカルの音楽の力、歌の力によってです。やっぱりホンモノは違う、ということです。


 ホンモノは違う、ということで言えば、ザ・イエロー・モンキーの復活もまた2016年の最大級のトピックでしたね。
15年ぶりの再結成を突然発表したのにも驚きましたが、彼らがそのツアーのステージで見せた姿、ステージング、そして聴かせた音、それらすべてが以前の彼らを超えていることに本当に驚きました。文字通り「THE YELLOW MONKEY SUPER」という最強バージョンにアップデートされた彼らの復活劇。だからこそ、新しいシングル『砂の塔』が10万枚を超えるヒットとなって受け入れられたのだと思います。



 こうしてみると、2016年はいつものように新しい世代の新しいアーティストたちによる新しい音楽が新しい風を吹かせた年であったと同時に、ホンモノたちがそれぞれ独自のやり方で圧倒的な力を見せつけてくれた年、というふうに言えるのではないかと思います。それがあまりにも圧倒的すぎて、世の中では「事件」になってしまう。それぐらい、ホンモノはすごい。それが証明されたのが2016年という年なのではないかと思います。
(山崎洋一郎)
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