日経ライブレポート「ジョニー・ウィンター」

100万ドルのギタリスト、ジョニー・ウィンターの初来日コンサートが実現した。1969年、当時としては破格の数十万ドルという契約金でデビューした事から、100万ドルのギタリストと呼ばれるようになった彼も今年67才。最近は新作のリリースもほとんどない。普通なら小さなクラブで行われるところだが、今回は東京だけでも2700人収容の会場で3回の公演が行われた。しかも連日ソールド・アウトまではならなかったが満員に近い観客が詰めかけた。ほとんどが40代以上の男性ファン。何十年も待った来日だけに客席はとても熱かった。

ライヴはベース・ドラム・ギターという編成のバック・バンドの演奏から始まった。このバンドが素晴らしかった。派手さはないが確かなテクニックに支えられた重いグルーヴが快い。そしてジョニー・ウィンター登場。ひざの故障がある為に椅子に座ってのパフォーマンス。椅子に座るのもスタッフに助けられてでつらそうだった。ただ演奏のテンションは高く、ブルースロックの定番曲を主体に力の入った演奏を聞かせてくれた。正直、往年の輝きは及ばなかったがこの日の観客は僕を含め、その元気な姿と変わっていない演奏スタイルを確認できた事に満足した。アンコールでトレードマークのギターであるファイヤーバードを弾いただけでたいへんな盛りあがりで、いかに彼がこの場に居る人から愛されているのかが分かった。

日本の洋楽黄金時代を支えていたのが、この日会場に集まった、今40代、50代のオヤジ達である。彼らの愛したアーティストへの忠誠心は強い。ジョニー・ウィンターも楽しんだと思う。

4月13日 ZEPP TOKYO

(2011年4月26日 日本経済新聞夕刊掲載)
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