B.B.キング、亡くなる

B.B.キング、亡くなる
開かれた人だった。人柄、音楽、思想、そのどれに於いてもB.B.キングは開かれていた。
僕の世代のブルース・ファンは排他的な人間が多く、ブルースを閉じられた音楽として、囲い込みたがった。
そういう奴は、本物のブルースと、偽物のブルース、みたいな話しが大好きだった。
彼らからすれば、僕が聞いている白人のブルース・ロックなど、偽物以前のどうしようもないものでしかなかった。
僕はそういう奴らと良く喧嘩した。43年前、創刊号のロッキング・オンに書いた原稿も、その喧嘩から生まれたものだ。
そんな僕みたいな人間にとって、B.B.キングは、いろいろな意味で神のような存在だった。
まず何より、彼は破格のブルース・ギタリストであり、ブルースという音楽の可能性の拡大に常に挑戦し続ける革命家でもあった。
そしてロックに対して、いつも愛と好奇心を持って接してくれる開かれた人だった。
B.B.キングがいてくれたので、僕は閉鎖的なブルース・ファンと闘うことが出来た。
ブルースの神様がロックの味方なのだから、こんなに心強いことはない。
たくさんのロック・ミュージシャンとのセッションがあるが、音楽だけではなく、人としての付き合いも多かった。
僕らは映像などで、彼とロック・ミュージシャンとの交遊を見ることができた。そこで見ることの出来たB.B.キングのキャラクターは、とても開かれた親しみやすいものだ。そういう面においても、僕らはブルースを身近に感じることができた。B.B.キングがいてくれたので救われたロック・ミュージシャン、ロック・ファンはとても多い。
彼が80過ぎても現役としての輝きを失わなかったのは、その開かれた思想と音楽があったからだ。
とても残念だ。大げさな意味でなく、B.B.キングがいなければ、今のロックは違ったものになっていたかもしれない。
ブルースが優れたポップ・ミュージックであることを深く理解していた人だった。
ご冥福をお祈りします。
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