ボブ・ディラン、東京最終日を観る。どうしてボブ・ディランは常に新しいのか?

ボブ・ディラン、東京最終日を観る。どうしてボブ・ディランは常に新しいのか?

既にセットリストはいろいろなところで出ているので書いていいと思うが、最新作「テンペスト」からの曲が中心になっている。
ディランについて語るとき、毎回引用しているが、何回でも引用したいので、今回もドン・ワズの発言を引用する。
ドン・ワズがディランのアルバムをプロデュースしたとき、何でプロデュースしたのかと聞かれたときの答えだ。「だって次の作品がディランの最高傑作になるかもしれないじゃないか」と彼は答えたのである。
ディランの凄いところは、その現役感である。現存するポップ・ミュージックの最大の偉人でありながら、常に新作に驚きと挑戦がある
最新作「テンペスト」もそうした作品だ。
アメリカン・ルーツ・ミュージックの衣装を着て、ちょっと聞くと年齢相応の円熟作のように思えるが、本質は挑戦と冒険の意欲作だ。
アルバム・タイトル・ナンバーの「テンペスト」は、タイタニックの悲劇をテーマにした、何と45番まである大作だ。そしてアルバム・ラストのナンバー「ロール・オン・ジョン」はジョン・レノンをテーマにした曲だ。番組で紹介したときにも言ったが、まるでビリー・ザ・キッドを歌うように、フォーク・ソングの伝承の主人公のように、見事にジョン・レノンを歌って見せたナンバーだ。
どちらも彼の挑戦的姿勢を示した、素晴らしいナンバーだ。
100年後も偉大な表現者として語られることが約束された人物が、そうして自らの表現を果敢に更新していく姿は感動的だ。これまで見たことのない新しいディランを、まるでニュースを見るように目撃出来る奇跡を、今夜も僕たちは体験することが出来た。
正攻法にブルースやロックンロールを演奏しながら、常に前衛的なグルーヴを感じさせるバンドの演奏が凄かった。
今だにチャーリー・セクストンに昔のイメージを重ねて不思議な気分になってしまうのだが(笑)
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