女性アーティストの活躍が光った第66回グラミー賞! 注目ポイントと未だ議論される課題とは

女性アーティストの活躍が光った第66回グラミー賞! 注目ポイントと未だ議論される課題とは - rockin'on 2024年4月号 中面rockin'on 2024年4月号 中面

今年のグラミー賞は、期待していた通り女性年になってとにかくホッとしている。グラミー賞と言えば、大方の予想に反し意味不明の結果で、項垂れるようなことの方が多かったから。

今年は、アルバム賞は、テイラー・スウィフトが4回目の受賞で史上最高記録を達成したし、レコード賞は、マイリー・サイラス、楽曲賞はビリー・アイリッシュ、新人賞はヴィクトリア・モネと主要部門は全員女性となった。また、ロック部門もほぼ女性が独占。ボーイジーニアスがロック・ソングなど3部門受賞。パラモアが、ロック・アルバムなど2部門受賞。なんと女性がフロントのバンドがロック・アルバム部門を受賞したのは史上初! さらに、最多11部門にノミネートされていた『バービー』のサントラは3部門受賞。この結果は、ここ数年のアメリカ社会への女性の反抗や団結も象徴していると思うのだ。

パフォーマンスにおいても、80歳のジョニ・ミッチェルがグラミー賞初のライブを披露し会場が息をのんだし、トレイシー・チャップマンが、去年ルーク・コムズがカバーして大ヒットした“ファスト・カー”をルークと共演し、88年のヒット曲を今に蘇らせこの日最大の話題となった。

痛快だったのは、受賞後の記者会見で、女性の活躍について訊かれたフィービー・ブリジャーズの答え。「レコーディング・アカデミーの元会長ニール・ポートナウは、女性アーティストは、グラミー賞でノミネートされたかったら『もっとがんばれ』と言ったけど、今性的暴力で訴えられている。彼に言っておきたい。まだ死んでないのは知っているが、その時がきたら、小便の中で腐れ(= rot in piss。rest in peaceにかけて)」。

また、女性の受賞に沸いたグラミー賞ではあったが、ドクター・ドレー・グローバル・インパクト賞を受賞したジェイ・Zがスピーチで大事な指摘をした。「彼女はグラミー賞に他の誰よりもノミネートされているのに、アルバム賞を受賞したことがない。どんなに評価基準は各自違うとしてもおかしいよね」。

もちろん彼女とは妻ビヨンセのことで、ジェイ・Zと並ぶ史上最多の88回ノミネートされているが、例えばテイラーが4回も受賞しているアルバム賞は一度も受賞していない。黒人女性は1999年のローリン・ヒル以来一度も受賞していないし、今回だってシザが最多ノミネートされ、売り上げも記録し、評価も高かったのに主要部門はひとつも獲らなかった。ひとつ前進、しかしまだまだ変化が必要なグラミー賞なのだ。 (中村明美)



第66回グラミー賞の記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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