『逃げ恥』第10話、「愛情の搾取」そうきたか……今週もレポートします

『逃げ恥』第10話、「愛情の搾取」そうきたか……今週もレポートします - (c)TBS(c)TBS

『逃げ恥』、先週放送の第9話は、ようやく平匡もみくりも、「好き」という気持ちを自分でしっかりと認識し、健全にお互いにもそれを求めるようになったところだった。幸せすぎて、観ていてニヤニヤするほどだったが、その空気感とは裏腹に、このまま順調にハッピーエンドで終わるわけがない感はヒシヒシと感じられる。まずは平匡のリストラ危機。さらにふたりの結婚生活についても、気持ちが通い合ったところでなお、「契約内容の改定が必要」とか言い出す平匡は、一体結婚生活をどう捉えているのか、一抹の不安が残る。みくりも、平匡のその発言には、どこか釈然としない様子。最終的には、システムの再構築ではなく、心の通じ合いが大切と、平匡も悟るのだが、それが今回、第10話での、平匡の詳細なマネーシミュレーション付きプロポーズへと発展してしまうのだ。

入籍すればもう雇用関係ではなくなるという結論は、平匡からすれば、そこに愛情があるから当然の成り行きにも思えるし、それが帰結すべき結末だと我々もなんとなく思っていたのではなかったか。が、しかし。みくりはそのプロポーズに対して「愛情の搾取」であると訴える。これまでは家事労働に対して支払われていた対価が、愛情というとても不安定なものを担保にして、入籍後は無償になるという、よく考えればなんとも都合のよい矛盾に、みくりは黙って頷くことができなかったのだ。

もう、平匡のリストラなんて、そんなたいした問題じゃないと思えるほど、最後の最後で「結婚」というものが持つ、そして誰もが遅かれ早かれ抱え込む、本質的なテーマをつきつけてきた。というか、すべてはこれを描くための前段だったのかと思うほど。せっかく初めてふたりが「いちゃいちゃ」して、ついにスウィートな夜を越えて、最高のムズキュンのあとに、この問題だもの。でもこの落差もまた「結婚」の現実なんだよなあ。お金の話なんかせずに、気持ちの高ぶりに任せて「結婚しよう」って言ったなら、みくりはきっと「イエス」と言っただろうに。でも、そこをはっきりさせておきたいのが平匡だし、納得できないことは飲み込まないのがみくりで、だからふたりの生活は、これまで何度も危機を乗り越えてきたのだし。

さあ、ある種の普遍的な社会問題とも言えそうな、この大きな問題にふたりはどう向かい合って、どんな結論を導き出すのでしょうか。寂しいけれど、いよいよ来週が最終話。風見と百合の恋の行方も気になるところだし、次週はテレビの前で正座して観ます。(杉浦美恵)
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