苦悶と葛藤でずぶ濡れの魂も、見えない明日を求めて手を伸ばす虚空の感触も、さユりの歌はいつだって鮮やかに、リアルに歌ってくれる。
観ている僕ら自身の混線しまくった思考と感情の回路を、不甲斐なさや愚かさまで含めてクリアに解きほぐして、目の前に提示してくるような感覚が、彼女のライブにはある。
だから、ワンマンでもフェスでも、そのステージはいつだって特別なものになる。今この一瞬を特別にしたいという僕らの想いと、他でもないさユり自身の意志とがせめぎ合い混ざり合って、奇跡のような時間が生まれていくのだ。

「夜明けのパラレル実験室 in 新宿～ここに宣戦布告編～」というタイトル通り、これまで定期ライブ番組として行われてきた「夜明けのパラレル実験室」が、今回は新宿ReNYに場所を移してのワンマンライブとして開催。
先日ライブで披露された野田洋次郎作曲の新曲“フラレガイガール”に加え、この日はカップリングの“アノニマス”を初披露。というかむしろ、“アノニマス”に歌い込まれたテーマを軸に、これまでのさユりの音楽世界を再構成したような、この時代を覆う空気感へ決然と宣戦布告を掲げるアクトだった。

「明日も、どうか生きていてください！」
この日も最後にさユりはそう呼びかけていた。今を生きることの重さと尊さを噛み締めながら、全身を振り絞るように歌い続ける彼女の核心そのもののような一夜だった。
COUNTDOWN JAPAN 16/17の2日目・12/29への出演も発表されたばかりのさユり。今年のROCK IN JAPAN FESTIVALに続き、また特別な瞬間を見せてくれるに違いない、と今から期待している。（高橋智樹）