スピッツ全アルバムレビュー 9th『ハヤブサ』【『醒めない』リリース記念】

2016年7月27日(水)に15thアルバム『醒めない』をリリースするスピッツ。
RO69ではリリースを記念して、これまでの全アルバムを振り返るディスクレビュー特集を行います。
『醒めない』リリースまで、1日1作品ずつレビューを掲載します。
本日の作品は2000年発表の9th『ハヤブサ』です。

スピッツ全アルバムレビュー 9th『ハヤブサ』【『醒めない』リリース記念】

私自身『ハヤブサ』はリアルタイムではなく、リリースしてから数年後に初めて聴いた。本当は友人に「“涙がキラリ☆”や“ロビンソン”が入っているよ」と『ハチミツ』を勧められたのに、レンタルCD店に着いた頃にはタイトルをど忘れしてしまい、「『ハ』が付いていて4文字だったよな」と曖昧な記憶を頼りにレジへ。で、聴いてみてかなり驚いたのを憶えている。ジャキジャキとしたアコギのカッティングで始まり、間奏ではエレキがうねりまくる1曲目の“今”からして、すでにちょっとした事件が始まっていて。夢中になっていたら、いくら聴き進めても例の2曲が出てこないことなんていつの間にか忘れていた。

当時は「あんなに爽やかそうな人たちにもこんなに尖った一面があるなんて」という衝撃があったが、今回改めて聴き直したところ、ベクトルはむしろ逆というか、「こんなに尖っているのに、それでも誰かに向かって手を伸ばしているなんて」という意味で感じ入る部分が多かった。リリース当時の2000年前後は、当時の雑誌のインタビューでも本人たちは語っていたが、スピッツにとって「キラキラしたポップソングを書く人たち」というパブリックイメージと、ロックバンドとして自分たちが目指す方向性との乖離に悩んでいた時期だった。しかしそれでも本作は独りよがりにはなっていないし、ヤケになって投げ出しているわけでもない。懐にスッと入り込み、胸の砂地に浸み込んでいくようなメロディラインを耳にすればそれは一発で分かる。

2016年の今から振り返ってみれば、スピッツ特有の、ライトに猛毒を飲ませる天邪鬼さは、このアルバムを機に極まっていったように思える。だから今聴けば意外と違和感がないし、だからこそ「『ハヤブサ』が如何にオルタナティブか」というところ以外の面に惹きつけられるのだろう。ねじれた道を真っ当に歩んできたバンドの、「変わらない」宣言でいて生まれ変わりそのもののようでもある、不思議な魅力を持つ作品。(蜂須賀ちなみ)


なお、スピッツは2016年7月30日(土)発売『ROCKIN'ON JAPAN 9月号』の表紙に登場します。
お楽しみに!

公開済の作品はこちら
2016年7月19日 8th『フェイクファー』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145859
2016年7月18日 7th『インディゴ地平線』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145808
2016年7月17日 6th『ハチミツ』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145806
2016年7月16日 5th『空の飛び方』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145804
2016年7月15日 4th『Crispy!』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145764
2016年7月14日 3rd『惑星のかけら』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145713
2016年7月13日 2nd『名前をつけてやる』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145667
2016年7月12日 1st『スピッツ』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145597
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