最新アルバム『eve』を携えてのcinema staff全国ツアー「about eve」ファイナル、Zepp DiverCity。「お客さんってこんなに笑顔で観ててくれてるんだ！って、ここ何本かのライブで初めて気づいた」と飯田もMCで話していた通り、コール＆レスポンスもシンガロングもあふれ返る開放感の中で、その凜とした爆発力に満ちたシネマの音楽世界が最大限にスパークする、圧巻の熱演だった。

「みなさんに救われてます。みんなの存在にやる気を引き出されてる」と熱気あふれるフロアに呼びかけていた久野、「音楽は最終的には愛だと思う。愛のないやつには絶対負けないっすよ！」と宣誓していた三島、とそれぞれに魂を開放していたcinema staff。そして今日、誰よりも魂解き放たれまくっていたのが、辻だった。

シネマのライブを観たことのある方ならご存知と思うが、彼らのセッティングは普通の4ピースのバンドとは明らかに異なる。3ピースバンドでももっと間隔空けるのでは？ってくらいにひっつまった飯田／三島／久野のトライアングルの中央で、辻はフィードバックノイズの渦の中、情熱の化身のようにギターを弾き狂い、幾何学模様的なアルペジオもエモーショナルなソロも縦横無尽に撃ち放っていく。バンドの中央で轟く辻のギターは言わば、シネマの衝動の象徴そのものだということだ。

この日のライブでも、フレーズと呼応するかのように全身を震わせたり、ギター抱えて舞台に倒れ込んだり、ダイブを決めたり、ついにはTシャツだけでなくズボンも脱いでパンツ一丁になってみせたり…と全身から歓喜を放射していた辻。そんな彼の姿は、過去最高レベルに開放的なダイナミズムに満ちたものだった。

「4人ですっごく話し合って作ったアルバム」（飯田）という『eve』。4人がより強くギアを合わせることで、かつてないほどに風通しのいい音風景を生んだ彼らの「今」の充実感を、リミッター外れた辻の姿が何よりリアルに表しているように思えて、無性に嬉しかった。

自身にとっても大きな武器として機能してきた転機作“great escape”をセットリストから外していたあたりにも、彼らの新たなビジョンと闘争心が滲んでいた。『eve』後の進化が、今から楽しみだ。（高橋智樹）