【祝20周年】ASIAN KUNG-FU GENERATION、全ALレヴュー大公開! 本日は『ランドマーク』

今年、めでたく結成20周年を迎えたASIAN KUNG-FU GENERATION。RO69ではそれを記念して、『崩壊アンプリファー』から『Wonder Future』まで全オリジナルアルバムを振り返るレヴュー特集を行います。毎日アップしていきます。本日の作品は2012年発表『ランドマーク』です!

【祝20周年】ASIAN KUNG-FU GENERATION、全ALレヴュー大公開! 本日は『ランドマーク』

6枚目の『マジックディスク』から2年3ヶ月という期間を経て、2012年9月にリリースされたのが、この7thアルバム『ランドマーク』だ。前作と今作との間には、言うまでもなく東日本大震災があり、福島第一原子力発電所の事故が起こった。距離的にある程度離れた東京に住む私たちでさえ、これまで味わったことのないような無力感と、それでも何とかしなければ、声をあげなければ、という2つの気持ちがないまぜになって、とても不安定な感情で日々を過ごしていたのを思い出す。様々な意見がSNSに上がる。原発問題、それにまつわる意見の相違は、これまで良好だったはずの人間関係にも溝を作った。

音楽に救いを求めるべきではないと思っていた(結果として救われた、という経験は何ものにも代え難いものだけれど)。でも、そんな感情でいるときに、「この人の歌を聴きたい」というミュージシャンは何人かいて、アジカンもその1組だった。明確な「NO」の表明を聞いて溜飲を下げたかったわけではない。ゴッチならどんな楽曲で、この悲しさや怒りや戸惑いや空虚さを表現するのだろうと思ったからだ。

震災から1年半が過ぎて届いた『ランドマーク』は、そんな重い気持ちを振り払うかのように、《口ずさめよ/オールライト》と歌う軽快なロックンロール“All right part2”で始まる。《言葉遊びは此処まで/意味を捨てて さぁ》という歌詞を目が覚めたような思いで聴いた。そこにある音楽、目の前にいる大切な人、まずはそこをきちんと見つめようと思わせてくれた曲だった。“N2”や“1980”など、具体的な出来事や社会に懐疑心や怒りを表す曲にも、予想以上のメッセージが込められていて、歌詞カードは穴があくほど読み込んでしまったけれど、それ以上に“それでは、また明日”にある《誰かが隠したような/僕らがなくしたような/何事もない日々を取り戻せそうか》という一節にこそ、アジカンが表現したかったことが集約されているような気がしたのだった。このアップテンポで駆け抜けるようなギターロックを何度も聴いて、その度に感情が揺さぶられた。

現在も新たな問題は起こり続けていて、その度にまた気持ちが揺れて、複雑な思いを抱き続けながら、今もよくこのアルバムを再生する。そして『ランドマーク』というタイトルの的確さを、また改めて実感するのだ。いつでも戻るべき場所の目印として存在する作品。バンドサウンドとしても申し分のない完成度を誇っている。(杉浦美恵)

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なお、2016年4月30日(土)発売の『ROCKIN'ON JAPAN」6月号には、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが表紙巻頭に登場。バンドの20年を全力で祝う大特集を展開しています!
詳細はこちら。
http://ro69.jp/product/magazine/detail/142123

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