A・ペイン新作、R・レッドフォード新作。人生の終わりとどう向き合うかについての素晴らしい2本。NY映画祭

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トロント映画祭について尻切れとんぼですが、NY映画祭に移ります。

現在行われているNY映画祭にて今日アレキサンダー・ペインの新作『NEBRASKA』と、ロバート・レッドフォード主演の『ALL IS LOST』が上映されました。両作品とも偶然なのかわざとなのか、年老いた主人公が人生の終わりとどう向き合うのか、ということについて描いた作品で、まったくテイストは違うのですが、どちらも素晴らしい作品でした。

アレキサンダー・ペインのほうは、毎回ながら、笑えて、泣けて、じーんとくるという微妙な線を絶妙なバランスで描いているのですが、個人的には、『ファミリー・ツリー』を上回っていたと思います。

内容的には、『ファミリー・ツリー』の延長線上とすら言えるもので、もう確実に死が近付いている父親と、その息子の家族のロード・ムービー。よくある「1億円当たりました~」というウソの広告を父親が信じて、それを取りに行くという物語なのです。息子は、当たってないのは分かっていながら、付き合ってあげるのです。その過程で昔住んでいた故郷を通過し、昔の友達に会ったりします。『ファミリー・ツリー』の時、ペインは、主人公が許しについて学ぶ物語だと言っていましたが、この作品は息子が父親を許すこと、理解することについて学ぶ物語だと思います。

アル中だし、母親には怒鳴られてばかりだし、というだらしない親父さんなのですが、まず演じているブルース・ダーンが本当に素晴らしい。ダメダメなんだけど、どこか愛すべき人物で、そしでどこか哀しい。思いきり口の悪い母を演じたジューン・スキッブも、旅の間に父親を理解していくウィル・フォルテもみんなペインの世界観にばっちりとはまっています。ブルース・ダーンがアカデミー賞ノミネートの可能性は高い……けど、ロバート・レッドフォードも高い……今年は枠が足りないです!

私が個人的に唯一気になったのは、モノクロだったこと。モノクロである必要がないように思えたから。そもそも、モノクロなのに、ほとんど色が見えてきた感じがしたし、撮影されたのは、タイトルの通りネブラスカで、想像するに、ネブラスカは、きっとカラーで撮っても、モノクロに観えたはずだから。というのが理由。監督は前からモノクロで撮るのが夢だったと語っていて、カメラを毎日のぞいて、すべての映画がモノクロになれば良いのにと思ったと言っていましたが。

モノクロ映画を作ってみたかったのは、初期のジム・ジャームッシュ映画と、今村昌平映画の影響だと語っていました。

予告編はこちらから。

それからロバート・レッドフォード主演作『ALL IS LOST』はものすごくて、なんと脚本が31ページしかなかったという作品。

観ればわかりますが、海にヨットで出て遭難したレッドフォードのキャラクターがひとりで、漂流する話。『ライフ・オブ・パイ』の、3Dでもなく、ファンタジーもなく、トラもいない版、という感じでしょうか。

出てくるのはレッドフォードのみで、台詞も最初のボイスオーバーがある他は、2つくらいしかないのです。監督&脚本は、J.C. チャンダー(『マージン・コール』)。レッドフォードは、脚本があまりによく書けていたのですぐにやりたいと思ったのだけど、あまりに挑戦的な作品なので、監督に一応会って、頭がおかしい人じゃないかどうか確かめた、と語っていました(笑)。レッドフォードの長いキャリアの中でも人の記憶に残る一作になること間違いないです。

個人的に好きだったのは、普通遭難した物語というのは、最初から主人公が助かろうと必死ですが、この物語は、主人公が本当に生きたいと思っているのかどうかよく分からなかった、というところ。

実は、その他、絶賛されているトム・ハンクス主演映画『Captain Philips』も航海中にサバイバルする映画ですし、こちらも絶賛公開中でしかも興行成績も1位のサンドラ・ブロック主演の『ゼロ・グラビティ』も宇宙でひとりサバイバルする物語です。今年は自然の中で、サバイバルする物語が多いのが一つ特徴かもです。

予告編はこちらから。

NY映画祭でも、良い映画たくさん観ていますので、徐々に紹介させていただきます。あ、コーエン兄弟新作について次は書きます!
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