パティ・スミスに会った!日本を歌う”Fuji-san"について訊いた&今は村上春樹に夢中とのこと

パティ・スミスに会った!日本を歌う”Fuji-san"について訊いた&今は村上春樹に夢中とのこと

今日、ニューヨーク伝説のレコーディング・スタジオ、エレクトリック・レディ・スタジオにてパティ・スミスに会い、最新作の『BANGA』について訊いて来ました!

このスタジオがなぜ伝説なのか、知らない人はグーグルで調べてもらいたいのですが、パティ・スミス個人にとっても非常に重要なスタジオでなにしろ、「私の記念すべきファースト・シングルの”Piss Factory”と”Hey Joe"をレコーディングした場所だから」ということ。さらに一緒に来たレニー・ケイによると「レコーディングしたのは、1974年の6月5日だった」というのです。

そして正にその日、「6月5日にこの新作が発売になるの!」です。

また、パティは「その翌日、1974年の6月6日は、私が初めてトム・ヴァーラインにキスした日でもあるの。スタッテン島行きのフェリーで、彼が”Hey Joe”で演奏してくれた後にね!(笑)」ということまで嬉しそうに紹介してくれました。

「だから6月5日、6日というのは私たちにとって非常に意味のある日で、それ以降、このスタジオでは『Horses』もレコーディングした」し、長年に渡っていくつかの作品もレコーディングしてきた、大事な場所であるということ。もちろんこの最新作『BANGA』をレコーディングした場所でもあるのです。

それで、この日は、アルバムのタイトルの意味(ロシア文学『巨匠とマルガリータ』に出てくる犬の名前!)や、1曲ずつの解説と、さらに、今日オバマに勲章をもらったボブ・ディランのことから、アルバムにエイミー・ワインハウスに捧げた曲が入っているのでエイミー・ハウスへの想いなどなど語ってくれたのですが、それは何度かに分けてご紹介するとして、今回はまず日本について歌った”Mt. Fuji”という曲について訊きましたので、ご紹介します。

まず「この曲は、レニー・ケイが作曲した曲で、日本の富士山への祈りを込めて書いた曲なの」ということ。

「地震が起きたことで日本の人たちが体験したことを想いながら、富士山に、どうか日本の人々を守ってくれますように、という祈りを捧げているのよね」ということです。

さらに日本に地震が起きた時どう思いましたか?と訊いたら、
「まず何より、同じことが日本以外の場所で起きたとしても、ハイチでもあったとしても、そこにいる人々のことを心配するものよね。

だけど、なぜ今回日本で起きたことに私が特別深く共感してしまったのかというと、まず私たちには日本に本当に素晴らしいファンがたくさんいてくれるから。そして、友達もたくさんいたからというのが大きかったの。

でもそれだけじゃなくて、今回日本の場合は、原発に対する恐怖にも直面しなくてはいけなかったでしょ。それが非常に大きかったと思うの。というのも、日本は、世界で唯一、もちろんアメリカが戦争の終わりに無惨にも投下したふたつの原爆によって被害を被り、本当に悲惨な恐怖感を味わわされた人たちであったわけだからね。

もちろん日本の人たちはそこからすでに前進していたわけだけど、でも、きっと日本の人たちの心にとって、再びこうして原発にまつわる恐怖を味わわなくてはいけないということは、その士気と自立心に非常に破滅的な影響を与えるんじゃないかと思ったの。特に、あれほど人口密度も高い国であることを考えると、精神的にとても辛い思いをしているはずだと思ったのよね。

だから私は家族を失った人たちを心配するのみならず、人々が退廃的な気分になっているんじゃないかと心配したわけ。

それでレニー・ケイと曲を書くことにしたんだけど、でも、それをそのまま書きたいとは思わなかったの。というのも、日本の人たちは、非常に誇り高き素晴らしい人たちで、精神的にも自立している人たちだから。だから私の心配を書くのではなくて、むしろ祈りにしたかったの。富士山に捧げる祈りにね。

どうか日本の人々に愛が降り注ぎますようにという、純粋な祈りを富士山に捧げたかったの。

だから、直接的にそれについて歌うことなくして、結束とか団結の気持ちを示したかったの。

そして、そう歌うことで、他の国で苦しんでいる人たちのことも、例えばハイチの人たちについても、決して私たちはあなた達を忘れていないからとそう伝えたかったの」

ということです。パティ・スミスが日本を思い、こうして美しい曲を書いてくれたことが何より嬉しかったです。日本の皆さんにも一刻も早く聴いて欲しいです!

それから、おまけですが。この作品には、それまでの作品のように、様々な文学や歴史にインスパイアされて書かれた曲が収録されているのですが、常にそういうことを学習しているのかという質問した時に出て来た答えが、

「自分は子供の頃から常に何かを夢中になって勉強する方で、例えば、今は村上(春樹)に夢中になっているところなの。明けても暮れても村上の本を読んで、村上の夢を見て、村上を読みながら日本酒を飲んでるの!」とも教えてくれました。「村上時代が私に到来しているよね」と言うことです。

というわけで、次回はその他の曲についてもご紹介したいと思います。パティの息子さんジャクソン(メグ・ホワイトの旦那)が、犬の鳴き声を真似していることなども含め(笑)。
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