M.I.A.記事@NYタイムス その2

M.I.A.記事@NYタイムス その2

なるほど。このライター、Lynn Hirschberg(ちなみに、NYタイムスで長年記事を書いている人です)は、この記事のタイトル、”M.I.A.'s Radical-Chic Rap" からもわかるように、とにかくM.I.A.は政治のことは本当は良くわかってないくせに、それを上手く利用して自分を売ってきた、ということが言いたいようなのだ。写真も入れてなんと全18ページにも及ぶ記事の隅々で、それを語り、ライター自身がそんなM.I.A.にどんどん苛ついていることまでわかる内容。


例えば、出産について。痛みや苦痛を受け入れなくてはいけない。それに、私の出産の痛みなんてスリランカの収容キャンプで子供を産む人達の痛みに比べたら何でもないからとM.I.A.は語り、自宅のプールで子供を出産すると散々言っていたにも関わらず、実は、ビバリーヒルズの一流病院の豪華個室にて出産した、と書いたり。


またスリランカの問題に関して、M.I.A.があまりにシンプルに物事を語りすぎているため、実は現状に悪影響を与えているということを、スリランカで民主化運動を繰り広げる人のコメントとともに説明したり。


”BORN FREE" のビデオがセンサーされるのは最初から予定通りで、だからツアーの内容も、”センサーシップ・ツアー”にすると発表する前から決めていた、とか。


しかしこの記事の中で実は一番たちが悪いのは、Diploのコメントで、その引用が正確なのかどうかは、こうなったらよくわからないが、「彼女は俺が付き合い始めた当初から、テロリストをギミックで使うことにはまっていた」「彼女は、他の人達とは違うことをやりたがっていたからね」という発言をしたりして、ライターの意図をまんまとサポートしていたりするのだ。


さらに、M.I.A.は、タミル・タイガーの一員であると示唆した父親とは引き離されて何年も会っていないと語っているが、Diploが、「俺は、ロンドンで彼女の父親と会ったことあるよ。彼はロンドンに住んで、教師になりたいと思っているようだった」と語り、さらに、そこでM.I.A.の発言も補足。彼女は今になって、父親のことは、スリランカの政府で20年間働き、父がタイガーの一員であることはでっち上げられた。そうすれば私のことを悪く言えるから、と言い直したりしている、と書いていたりする。


というように上げ出したらきりがないのだが、この8500字にもわたる記事の中で、とにかくどこかこの女嘘くさいぞ、と言わんばかりなのだ……。そりゃM.I.A.も怒るわ、という内容。


しかし、これだけ話題になったら、怒るのは、M.I.A.ともしかしたらこのライターで、NYタイムスは実は喜んでいそうだ、というのが皮肉でもある。
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