ヨンシー@ターミナル5ライブレポその2

  • ヨンシー@ターミナル5ライブレポその2
  • ヨンシー@ターミナル5ライブレポその2
  • ヨンシー@ターミナル5ライブレポその2
  • ヨンシー@ターミナル5ライブレポその2
  • ヨンシー@ターミナル5ライブレポその2
  • ヨンシー@ターミナル5ライブレポその2
  • ヨンシー@ターミナル5ライブレポその2
  • ヨンシー@ターミナル5ライブレポその2

シガー・ロスのボーカル、ヨンシーが、ソロとして発売した”GO"。開かれたと言われているこの作品だが、まずライブで思うのは、そのサウンドが、全方向に向かって何倍も表現力を豊かにし、深みととりわけ体温を宿しているということ。だから地球が流した涙のようなヨンシーのファルセットは孤独に凍てついていなかった。トム・ヨークのソロ・プロジェクトじゃないが、これは、ヨンシーの”肉感的”な作品なのだということを体中に浴びるような感動的なライブだったのだ。


この日NYターミナル5(キャパ3000人)で行なわれたライブは、初のソロ全米ツアーの最終日。2日間ソールドアウトだ。始まりはむしろ静粛だった。しかしヨンシーは、アコギを抱えて、フォーク!を奏でたのだ。影絵のように映し出されたスクリーンには、動物達の姿が。”開放”のアルバムを期待していくと始まりはよりダークに聴こえるかもしれない。しかし、シガー・ロスではないメンバーで構成されたバンドが徐々に、チャーチ・オルガン、ヴィブラフォン、アコギ、エレキなどをかき鳴らしながら、いつしか”ダンス・ビート”を刻み出す。そして、スクリーンに、光が差し込むのだ。正に「僕らは何だって出来るんだってこと忘れちゃいけない」と彼が歌うように。そこでパーカッション、ビートはさらに高鳴り、ピアノが高揚感のあるサウンドを鳴り響かせる。アンコール前の2曲でしかし再び静粛な曲に戻るのだが、とにかく全編に渡って素晴らしいアレンジの中でも秀逸なその2曲には、明らかに胸の高鳴り、希望が宿っている。そして、そこでヨンシーが踊り始める。


そしてアンコール。すべてがうまく収まったようなその瞬間の後に、しかし、なんとその全てを、希望も、光も、静粛も、歓喜も感動も、すべてを飲み込んで、何もかもを嵐がゴーゴーと吹き飛ばしてしまうのだ。しかし、それは哀しみとしては表現されていない。ヨンシーは、頭に羽の飾りを付け、その嵐の真っ直中で踊ってみせる。頭を大きく振りながら。それはヨンシーがこのソロで辿り着いた圧巻の表現力を持った壮大な曲だった。そしてその後に穏やかに雲が流れだす。僕らはここから始めるだ、と言わんばかりに。ここには、シカやクマがいたが(シガー・ロスのライブでも鳥はよく飛んでいたけど)、シガー・ロスの残響に存在した、意味不明の恐怖、”ゴースト”がいなかったのかもしれない。恐怖が消えたわけではないが、少なくとも、その正体がわかったのかもしれない。それが彼に勇気と解放を与えたのかもしれない。そして、そんなことをまるで物語を語るように表現してみせた素晴らしいライブだったのだ。
中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする