ケンドリック・ラマーの今年唯一のライブを観た! ハリー・スタイルズに、100 gecs、ドライ・クリーニングなど、書ききれなかった今年心を持ち上げてくれたライブ。

ケンドリック・ラマーの今年唯一のライブを観た!  ハリー・スタイルズに、100 gecs、ドライ・クリーニングなど、書ききれなかった今年心を持ち上げてくれたライブ。 - Courtesy of the Recording Academy® / Getty Images © 2020Courtesy of the Recording Academy® / Getty Images © 2020

今年は、前半は全くライブは行われていなくて、後半になってライブが開始されたアメリカ。

このブログでも何度かレポートしているけど、フェスのヘッドライナーを堂々飾ったビリー・アイリッシュに、初ライブを行ったオリヴィア・ロドリゴなどの新世代から、フー・ファイターズや、グリーン・デイなどの大物まで、可能な範囲内で素晴らしいライブを観ることができた。

しかし、まだレポートできてないライブもある。しないままで年越したくないので、今年の沈んだ心を持ち上げてくれたライブを短くご紹介。

1)ケンドリック・ラマーの3年ぶりにして今年唯一のライブ:11月12日ラスベガスフェス DAY N VEGASのヘッドライナー

”One Night in Vegas. From Section. 80 to DAMN.”と題されていたライブは、そのタイトル通り、なんとキャリアを総括する内容だった。しかも、アルバム1枚ずつにどんなメッセージが込められていたのか文字で紹介。ステージに浮かび上がっていた。

しかし、全身真っ白の衣装で登場したケンドリックの何が凄かったかと言うと、全キャリアを総括しているのに、彼の新時代が幕開けしたことを見せつけるような新コンセプトのライブだったこと。

何しろ、教会のコーラス隊に扮したダンサーから、バレリーナ、子供たちも出て来て、その多くの曲は完全にこれまでにない振り付けがされていたり、または、曲が新アレンジにされていた。つまり、この日彼はキャリア全体を全く違うフレームに入れて紹介し直し、しかもそれがこれまでのレベルを超えるような新たにアーティスティックな作品としてパフォーマンスされていたこと。それに感動した。

この1回のパフォーマンスのために曲もアレンジし直し、振り付けも付けたのか?と思うと驚異的だった。本来は、2020年にグラストンベリーのヘッドライナーだったので、もしかしてそのために用意されていたライブだったのかもしれないと思ったらくらいの完成度の高さだった。
https://youtu.be/KKP2MGYIsYg

始まった瞬間に、コロナ禍で自分に必要なものってこのケンドリックのライブだけだったかもしれない、と思ったくらい心が持ち上げられたどころか、魂が生き返るのを感じるようなライブだった。

面白かったのは、ファンの多くは、このライブの最後にきっと新曲を1曲でも披露してくれると思っていたみたいで、「新曲!新曲!」と叫ぶ人が多かったこと。しかしその代わりに、”family ties”と”range brothers”でBaby Keemが登場し、そして”LOVE.”が最後から2曲目に演奏されたから感涙。

最後は、”Sing About Me, I’m Dying of Thirst”を「自分が最も好きな曲のひとつ」と紹介して、ケンドリックが感極まっているのでは?と思えたくらいの正に「この日を忘れるな。新しい人生の始まりなんだ。お前のリアルな人生」とラップする感動的な終わりだった。

しかも、ここで、コーラス隊に扮したダンサーや、バレリーナ、子供たちが、真っ白なケンドリックを囲んで、家族写真のように集合。ケンドリックがそこで、曲を続けながらも、「俺はこれを愛のためにやっているんだ。世界のためにやっているんだ」と繰り返し語ったから爆涙。この曲の前に”LOVE.”を感動的にパフォーマンスしたこととも繋がっていた。

ちなみに、このちょうど1週間前に、トラヴィス・スコットのライブで10人もの人たちが亡くなったばかりで、全ての人たちが恐らくそのトラウマを抱えてここに集まっていることとも関係しているように思えた。さらに、ここで黙祷まで捧げた。それは、トラヴィスのためだけでなく、混乱した世界に向けていたと思う。実はこのフェスの2日目のヘッドライナーはトラヴィスだったのだが、ポスト・マローンに変更されていた。

そして、また「すぐに帰ってくる!」と言ってこの日のライブは終わった。現時点では結局新作は出てないけど、今度はロック寄りのサウンドになっているとう噂もある。全くどんなものになるのか分からないけど、この日のライブを観るにつけ、どんなことでもあり得るし、アーティスティックなレベルが上がっている作品であることだけは間違いないと確信した。これから残り1週間でアルバムが出なかったら、来年最も楽しみな1枚であることは間違いない。

どうか無事スーパーボウルのハーフタイム・ショーが行われますように!!!!(祈)。そのあたりで新作が出るのかな???

セットリスト
Section.80
1. Fuck You Ethnicity
2. A.D.H.D.
3. HiiiPoWeR
4. Hol’UP
5. Chapter Ten
6. Ronald Regan Era (His Evils)

good kid, m.A.A.d city
7. Money Trees
8. Backseat Freestyle
9. Swimming Pool (Drank)
10. Poetic Justice
11. Bitch, Don’t Kill My Vibe
12. m.A.A.d city

To Pimp a Butterfly
13. King Kunta
14. i
15. Alright
16. Institutionalized
17. The Blacker the Berry

DAMN.
18. DNA.
19. ELEMENT.
20. LOYALTY.
21. LUST
22. HUMBLE.
23. family ties
24. range brothers
25. LOVE.
26. Sing About Me, I’m Dying of Thirst

2)ハリー・スタイルズのNYマディソン・スクエア・ガーデン。5日間もやったのにチケットが全然取れなかった。10月3日。

多くのメインストリーム・アーティストは、今年は様子見のようにフェスのヘッドライナーを行い、単独ツアーは来年という中、数少ないメインストリームの単独ツアーを決行しただけで感動のハリー・スタイルズ。内容も本当に最高だった。

と言うか、NYはマディソン・スクエア・ガーデン(20000人キャパ)で、5日間もやり、360度観客の入るステージの設定にしていたのに、本当に本当に本当にチケットが取れなくて、長い間マディソン・スクエアに通っているけど、こんな席で観るの初めてというようなバーのスツールみたいな椅子の果てしなく遠い席で観た。

それなのに! ハリー・スタイルズが素晴らしすぎる。何しろ、ライブの90分間、会場の女子を100%ピュアな喜びのみで楽しませたから。この喜びがない時代に、人に幸せだけを与えられるって、とてつもない才能だ。しかも彼の場合は、ワン・ダイレクションとは全く延長線上にない曲に挑戦してやっているのに素晴らしいのだ。

最初のソロ・ツアーの時も思ったけど、誰より難しい挑戦をしているのに、ファンがしっかりとついて来ているのもまた最高。その成果がここで花開いているようなライブだった。相変わらず前座もメンバーも女性が多い。

無駄なマスキュリ二ティを解体する姿も素敵すぎる。NYではちょうどハロウィンにもライブを行い、なんとグッチが作ったドロシーの衣装で出てきた。可愛すぎる。

それじゃなくても、スパンコールに、キラキラに、フワフワ。軽やかに時代へメッセージを放っているところが益々素晴らしい。

3)やっと観れた100 gecs。12月11日。

コロナ前のライブのチケットは大学でやったので取れなくて、その後はコロナ。コロナ禍でやったtwitchコンサートは最高だった。NYでは3000人x2日間売り切れのライブ。観客は20歳前後の若者が大半だったんだけど、何が感動したって、アウトサイダーみたいな子がたくさん来ていたこと。彼らみたいな仮装している子もいたし、ローラがトランスジェンダーを公言していることもあり、LGBTQコミュニティのファンもたくさん来ていた。

音楽的にもそうだが、全てを受けとめているところが最高。しかも、「私達がもっと何をしたらみんなを幸せにできるかな?」とさらっと言ったのもカッコよかったし、みんな本当に幸せそうにぴょんぴょん飛んでいたのも良かった。

4)ドライ・クリーニング。11月18日。
ドライ・クリーニングはじめ、UK若手が11月あたりに一気に来た。インヘイラーも、スクイッドも、しかし全然チケットが取れなくて、ドライ・クリーニングも取れなかったんだけど、ラフトレードが特別ライブをやってそれに何とか行けた。

とにかくバンドが異様に上手いし、彼らのカオティックな熱に囲まれながらも、ボーカルのフローレンスが1人違う方向を観て、冷え冷えに覚めたパフォーマンスを繰り広げたのがカッコ良すぎたし、それが今に観えた。歌詞も最高だし、カセットテープをガチャガチャ鳴らしたりもしてた。また観たい。

ひとつ心配なのが、今例えばハリー・スタイルズが行うはずだったライブをキャンセルしたことだ。オミクロン株がこれ以上猛威を振るいませんように!!!



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ケンドリック・ラマーの今年唯一のライブを観た!  ハリー・スタイルズに、100 gecs、ドライ・クリーニングなど、書ききれなかった今年心を持ち上げてくれたライブ。

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