レディオヘッドが来た!(2人)「これはファッキング大きな意味がある」と語る+レディヘ、デヴィッド・バーンの素晴らしいスピーチ映像+訳。ロックの殿堂入り授賞式に行って来た。

レディオヘッドが来た!(2人)「これはファッキング大きな意味がある」と語る+レディヘ、デヴィッド・バーンの素晴らしいスピーチ映像+訳。ロックの殿堂入り授賞式に行って来た。 - pic by Akemi Nakamurapic by Akemi Nakamura

3月29日にNYブルックリンのバークレイズセンターでロックの殿堂入り授賞式が行われた。果たしてレディオヘッドが来るのかどうかも気になったので見てきた。

式はいきなりスティーヴィー・ニックスのパフォーマンスで始まって観客は即総立ち。さらにハリー・スタイルズと、トム・ペティとの曲“Stop Draggin' My Heart Around”を共演したので最初から物凄い盛り上がりだった。それについては別のブログでレポートします。

スティーヴィー・ニックスに続いて殿堂入りしたのがレディオヘッドだったので、1、2パンチという感じで盛り上がった。

レディオヘッドの殿堂入りスピーチをしたのはデヴィッド・バーンだった。
彼のスピーチの映像はこちら。
https://youtu.be/i7uCTv9Jboc

そそそして! 誰も来ないと思っていたのに、レディオヘッドからエド・オブライエンとフィル・セルウェイが来たからびっくりした!

映像はこちら。
https://youtu.be/cr8LtFMQcmc

バーンは、レディオヘッドの素晴らしさについて大きく2点あると語り、1つは、音楽的に革新的なことをし続けたこと。そしてもう1つは、音楽の発表の仕方においても革新的であり続けたこと。レディオヘッドの名前の由来についてや、「音楽ファンは時にバカじゃない」など、途中いくつか笑えることも語りながら、レディオヘッドを大いに讃えていた。内容の要約は以下の通り。


「レディオヘッドが、僕の作った曲からバンド名を取ったと聞いてすごく驚き、光栄に思った。ただ『よりによって何であの曲なんだろう?』と思わずにいられなかった。その理由はいまだに知らないし、実際知りたいとも思っていないんだけど、でも、なぜあのちょっとふざけたテキサスのメキシカン料理みたいな曲なんだろう?と。まあいつか分かるのかもしれない。

ただありがたいことに、僕は彼らの大ファンだし、彼らは2つの理由で、殿堂入りに値するバンドだと思う。まず彼らの音楽。そのクオリティ、しかも革新し続けているということ。そしてもうひとつは、彼らが音楽と同じくらい、音楽をどのようにリリースするのかにおいても革新し続けていること。それは、音楽産業全体に影響を及ぼすものであり、今日ここにいる音楽関係者の中にも、彼らに多大なる影響を受けた人達はかなりいるのではないかと思う。つまり彼らは、その両方の分野においてクリエティブであり、頭も良かった。それは、すごく稀でインスピレーションとなる取り合わせだと思う。彼らの世代においてのみではなくて、いつの時代であっても。


ここで、いくつのか小さな例を紹介したい:イギリスの「Radio 1」は“Creep"をオンエアするのを断った。あまりに気が滅入るからと(笑)。だけど、世界中のそれ以外の場所ではオンエアされ、結果どうなったのかはご存知の通り。

それからもうひとつは、関係者がここにいたら申し訳ないけど、キャピトル・レコードは、彼らの傑作と位置付けられている『OK コンピューター』を、キャリアを終わらせる自殺行為とみなした(笑)。だから、それに合わせた発売/マーケットプランに切り替えた。しかしイギリスでは1位になり、“Paranoid Android”は新“Bohemian Rhapsody”と位置付けられるまでになった。それがどういう意味なのか良く分からないけど、映画化されるのが楽しみだ。そして、誰がトムを演じることになるのか、金髪の頃のトムなのか、今のトムなのかを見るのも楽しみだ(笑)。

僕にとって偉大なる転換期となったのは、その後に発売された『キッドA』だ。(大拍手)僕に拍手されても困るよ。僕が作ったわけじゃないからね。このアルバムで彼らがいかに曲の構造の中にエレクトロニックを合わせてみせたのかに、僕はぶっ飛んだ。こんなものを聴いたことがなかったから。カンや、マイルス・デイヴィスのエレクトリック期などの影響を感じさせる部分はあったけど、でも全然違うものだった。

この何が奇妙で、かつ元気の出ることだったかと言ったら、このアルバムが人気であったということ。大ヒットしたということ! それは、アーティスティックなリスクを犯す価値があるんだと証明してくれた。そして、音楽ファンは時にバカじゃないんだと証明してくれた。今日ここにいる音楽関係者の人達にもいつか証明される日が来ると思う。あれだけエクスペリメンタルな作品だったにも関わらず、アメリカでも1位になったんだ。しかもビジネス的にも、彼らはすでに革新的だった。あれは2000年だったけど、アプリで音楽をストリームでき、色々な情報にアクセスできるようにしていたからね。

そこから何枚か後に出たのが『イン・レインボウズ』だった。その頃までには、ラジカルなサウンドを鳴らしたり、エッジのあることをするのは、ファンにとっても彼らにとってもむしろ完全に自然なことになっていた。そこで彼らは「自分が好きなだけ払う」という、その売り方において、ラジカルな飛躍を遂げた。つまり、0セントでも1セントでも良かった。その時のレコードの値段を払う事もできた。結果的には、ほとんどの人達がお金を払い、場合によっては普通の値段より高く払った人もいたくらいだ。

それって最高だと思った。なぜならそれは、彼らの観客への信頼を表したものであり、人々への信頼を表したものだったから。バンドはみんなを信じて、音楽の金額をそれぞれに決めてもらうようにすることによって、「このアルバムにどれだけの価値があると思うか教えて欲しい」と言っていたようなものだった。それに対して観客は、「何かしらの価値があると思う」と答えたわけだから。それ自体が、素晴らしい社会的な実験だったと思う。音楽産業のみにおける実験だっただけではなくて。

さらに発売に関する革新としては、却下され結局使われなかった『007』のテーマ・ソング“Spectre”を(笑)、SoundCloudでリリースしたことが挙げられる。

音楽的には、彼らはその後も変わり続け、最新作の『ア・ムーン・シェイプト・プール』は非常に映画的なサウンドで、まるで頭の中にある映画をサウンドにしたようだった。少なくとも僕の頭の中にあったような映画なわけだけど。彼らは、ポピュラー・ミュージックに対する概念と、それをいかにリリースしマーケティングできるのかという概念の両方を変えてきた。

その栄光を讃えて、ここにレディオヘッドをロックの殿堂入りさせたいと思います」

そしてレディオヘッドのスピーチ。以下要約。

フィル「どうもありがとうございます! これは本当に栄誉なことです。とりわけ、殿堂入りしてくれたのがデヴィッド・バーンだったことは本当に特別です。デヴィッドが言ったように、僕らは30年前に彼の曲からバンド名を借りました。幸運なことに、まだ返して欲しいとは言われていません(笑)。

僕にとってレディオヘッドのメンバーであるということがどういうことなのか、話したいと思います。それはどこかぎこちないものであり、また大変だと思えるものです。でも恐らくこのバンドは、僕ら全員にとってこの30年間、常に面白いものであり続けたのだと思います。僕はこの5人でやり遂げたことを、誇り以上に思っています。また、この5人がいなかったら、レディオヘッドは絶対に今のレディオヘッドにはなっていなかったとも思っています。それに拍手してくれるなんて、最高です(笑)。

僕は、みんなが通っていた学校でバンドのリハーサルを初めてした時のことをすぐに思い出せます。そして、今でも僕らが演奏する時、その時の僕らがまだここにいると思うことができるのです。

僕らは、音楽的な新技術をみんなで一緒に学んできました。なので、それぞれの曲が新たな勉強となり、アルバムはその過程で何を学んだかを示す表のようなものになりました。僕らは時代を代表するような偉大なミュージシャンとは言えません。増してや、メディアに対して最もフレンドリーなバンドとも言えません(笑)。しかし、自分達がレディオヘッドであることの達人にはなっていきました。それで人と結び付きを感じることができた時は、最高の気分になります。それは決して、決して当たり前のことだとは思っていません。だから本当に、本当にありがとうございます」

エド「僕が言いたいのは、これが本当に美しくシュールリアルな夜だということです。そして、僕らが出てきた場所からは本当に遠くかけ離れた所です。だけど、僕らを招待してくれて、そしてロックの殿堂に入れてくれて本当にありがとうございます。これは、ファッキング大きな意味があることのように思えます。他のメンバーもここに来られたら良かったと思う。彼らも絶対にそう思っていたと思う。本当にありがとうございます。

当然、僕らの様なバンドは、ここでお礼を言うべき人達がたくさんいます。だけどそれを一人一人2分間言うと皆さんが退屈すると思うので遠慮します。本当は言いたいのですが。だけどまず家族に感謝したい。僕らが音楽をやることを奨励してくれてありがとう。それから僕らの子供達に、妻達に、それからパートナー達に。僕らに世界中で好きなことをやらせてくれてありがとう。それから、僕らの音楽に感動してくれた人達みんなにお礼が言いたいです。

それから僕らのショーに来てくれた人達、参加してくれた人達にも。これはどのミュージシャンでも分かっていることですが、ステージにいるのは僕らだけではないからです。そのおかげで、これまでもみんなと最高に輝かしい夜を体験できました。それから僕らと一緒に仕事してくれた人達にもお礼が言いたい。僕らは本当に恵まれたバンドだと思います。本当に才能があり、インスピレーションとなる人達と仕事してきました。それは音楽にとって良かったばかりか、人間として最高なことでした。そしてレディオヘッドにとっても、本当に大事なことでした。

だけど、僕が最もありがとうと言いたいのは、僕の兄弟であるフィリップと、トムと、コリンと、ジョニーです。ここにいるどのミュージシャンも、そしてファンにも分かっていると思います。これがいかに偉大なる旅かということを。本当に素晴らしいことです。これはありふれたことではないと思うんです。だから本当に最高だと思うし、しかも、もう34年間もやってきて、いまだにやり続けているのです。彼らの高潔さに感謝したい。彼らがいかに本物であるかに感謝したい。そしてどれだけ自分を捧げているのかに感謝したい。どれひとつとっても当たり前のことではないと思うから。そして彼らがどんなミュージシャンであるのかにも感謝したい。僕らが一緒に演奏する事、そして僕らが一緒に演奏することで生み出すサウンドに。僕らがリハーサル・スタジオで演奏している夜に、何かを超越したと思える瞬間があります。だからそれに感謝したいと思います。だけど一番感謝しているのは、彼らの深い深い友情です。お互いへの愛がなかったら絶対にできなかったと思うから。僕らには深い深い結び付きがあり、それは本当に美しいことだと思う。だからありがとう。アイ・ラブ・ユー」
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