ブラック・キーズのダン「銃声が聞こえないかと怖くてうずくまっていた」とパリのテロの恐怖を語る

ブラック・キーズのダン「銃声が聞こえないかと怖くてうずくまっていた」とパリのテロの恐怖を語る - pic by AKEMI NAKAMURApic by AKEMI NAKAMURA

ブラック・キーズのダン・オーバックは、金曜日の夜、イーグルス・オブ・デス・メタルがライヴをしていた場所からわずか5キロ以内の場所で、自身の別プロジェクトであるThe Arcsのライヴをしていた。

「銃声が聞こえないかと怖くてうずくまっていた」とローリング・ストーン誌に語っている。また、「自分が生き残ってしまったことに、罪の意識を感じた」とも。
http://www.rollingstone.com/music/news/dan-auerbach-in-paris-we-were-hunkered-down-listening-for-gunshots-20151114

以下抜粋。

「知らせを聞いたのは、ライヴが終わってステージから降りたばかりの時だった。サイレンが聞こえたけど、何が起きているのかは分からなかった。銃撃があったと誰かが言って、イーグルス・オブ・デス・メタルのライヴ会場で爆破があったと聞いた。『ウソだろう!』と思ってすぐに、ジョシュ・オムにテキストをした。『大丈夫か?』と聞いたら、『大丈夫だけど。俺はLAにいるんだ。何かあったの?』と返事が来て、彼がEODMと一緒にツアーしていないのが分かった。『それは良かった。いや、すごく酷いことを聞いたから』と返したんだけど、その酷いことは本当に起きて、とにかくそれは最悪としか言いようがない。

僕らの状況は、EODMとほぼ同じだった。会場のキャパは1500人で、築150年のライヴ・ハウスで演奏していたアメリカのバンドだった。たった5キロしか離れていない所にいた。そう考えると本当に頭がおかしくなりそうだ。僕らの会場は閉鎖されたから、1時間くらいはそこに残っていた。犯人がまだ逃走中というニュースも聞いた。さらに2カ所で人質になっている人達がいるというニュースも入って来た。僕らはバルコニーにいて、安全な場所にいたと言える。すべての扉は閉められていたし、全部に警備がついていた。だけど、銃声が聞こえないかと怖くてうずくまっていた。ヘリコプターが飛ぶのが見えたし、パトカーが警報を鳴らしながら駆け抜けて行った。

首相は、国境は閉鎖されていると言っていたけど、ツアー・マネージャーが、僕らをここから脱出させると決断した。それで、12時になったら、みんなでバスに飛び乗った。街からは簡単に脱出できた。何の問題もなくイタリアのミラノまで辿り着いた。パトカーや救急車、街を彷徨う人達をたくさん見た。みんな信じられないという顔をしていた。

犠牲者の一人、ニック・アレキサンダーは、僕らのマーチャンダイズを担当してくれていた人だ。もう彼とは10年以上一緒に仕事をしている。彼はヨーロッパでツアーがあるといつも僕らと仕事してくれた、僕らの家族の一人だった。すごく良い人で、いつでもモッズヘアで、そして、いつも笑顔だった。

ブラック・キーズがツアーに出ると、30人くらいのサポート・スタッフが同行する。僕らはみんな強い絆を結ぶ。それはどのバンドも同じだ。ジプシーのような奇妙なライフ・スタイルで旅するわけだから。その中でも、ニックは本当に良い人だった。本当にロックンロールな奴だったんだ。それが生き甲斐という人だった。マーチャンダイズを売る仕事というのは、本当に大変だ。会場には最初にやって来て、最後までいなくてはいけない。マーチャンが売れるその瞬間に、100%準備できていないといけない。一瞬にして人がやって来て、去って行くから。だから、それに長けた人を見付けたら、絶対に離さないものなんだ。彼はたくさんのバンドにとってそういう存在だった。

ブラック・キーズは、the Bataclan(テロが起きたライヴ会場)で、ちょうど5年前にライヴをした。The ArcsのNick MovshonとLeon Michaelsもその時、僕らと一緒にツアーしていた。そこは、僕らが何度もライヴした場所だし、昨日一緒にライヴをしていたメンバーとライヴをした場所でもあった。だから本当に堪えたんだ。昨日そこにいた人達は絶対に僕らが知っている人達だ。中には絶対『イーグルス・オブ・デス・メタルと、The Arcsのどっちを見よう?』と思っていた人達がいたはずなんだ。だから目が覚めた時、思いきり気持ちが落ち込んだ。自分が生き残ってしまったことに、罪の意識を感じた。なぜ彼らのライヴ会場で起きたのか? なぜそれは僕らの会場ではなかったのか? だから、その人達のことを思うと本当に胸が張り裂ける。そして、僕らの音声さんや、照明さんのことを思う。そこにいたのは彼らだったかもしれないと。それはただ恐ろしい」
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