2009年のNYを予言した1980年の賢者たち 2009.05.20 23:03 現代のNYサウンドの革新性と論理性、そしてなにより音楽性の豊かさについては、
今後よりいっそう語られるところとなるだろう。
そして、それがどんな背景とそれにともなう危機感に促されて現れたかについても、
折に触れ思い出されることだろう。
それは、たとえばサッチャー政権下にザ・クラッシュの登場を見ることや、
取り残されたレーガノミクスの罪としてニルヴァーナを見つめることと
同様の歴史観と、それがもたらす未来への智恵を、
われわれに届けてくれることになるはずだ。

そのとき、思い起こされるべきもうひとつのワードに、
パンクも加えておきたい。
パンクといっても、それは、
昨今流通しているグリーン・デイが象徴するような類のものでも、
あるいは、ラモーンズやピストルズが体現するようなものでもない。
それは奇しくも1980年を前後としてリリースされた
3枚のアルバムとその担い手たちのことだ。

よくいわれるように、
現在のNYサウンドにデヴィッド・バーンの影響を認めることは容易だ。
アフリカン・ビートを大胆に導入し、
イーノからブリューまでむさぼるように音楽ツールを駆使して
構築された
「リメイン・イン・ライト」のサウンドは、
アカデミックに論理付けられたフリー・スタイルを今に手渡した。
あるいは、現在のNYミュージシャンからフェイバリットにあげられることも多い
XTCのアンディ・パートリッジは、
ポップへの偏執狂ぎみなトライアルを重ねていったことでも知られる英国人だ。
スペクタクルな曲展開、奔放なミックスのバランス、そして何より、
音への執着。
アルバム「ブラック・シー」の荘厳は、破壊のニュー・ウェイヴが奇跡的に生み出した永久建築だ。
そういう意味では、スクリッティ・ポリッティのグリーン・ガートサイドも
忘れることはできないだろう。
ウェールズ出身のひとりパンクスが突如目の前に提出したアルバム
「キューピッド&サイケ」のスリリングなシンセサイザー・ワークは、
いまなおその輝度において他を圧する、ひとつの世界を形成する。

デヴィッド・バーンとアンディ・パートリッジ、そしてグリーン。
彼らは、奇しくもパンク第1世代に属しながら、
そして、いまなお異彩を放つ作品を残しながら、
その王道で語られるよりも、
特別な傍流として、その功績を記されてきた。
つまり、その共通するところは、「辺境」ということだった。
彼らは、パンクという改革運動の渦中にありながら、
さらに独自の王国を独自に築き上げた奇才たち、だったのである。

現在のNYサウンドに、彼らの痕跡を強く認めることは、
必然なのかもしれない、と思うのである。


なぜNYのバンドたちは突然変異をしたのか 2009.05.20 12:15 アニマル・コレクティヴにグリズリー・ベアにダーティ・プロジェクターズ。
これらのバンドはみな、NYをその拠点とするバンドである。
奇しくも今年、3バンドのニュー・アルバムがリリースされる。
そのどれもが、素晴らしいのである。

ある地域が突如、ロックの中心になるようなことはこれまで何度もあった。
特にNYという巨大グローバル・シティであれば、
そのような沸点はいくども経てきている。

では、ここにきての、この「突然変異」としか呼びようのない勃興は何なのか?
しかも、その「突然変異」が、手触りは違えどあたかも同じ方向を向いていたのはなぜなのか?

あらためていうまでもなく、それは9.11である。
そして、あらためていっておきたいのは、
そこにグラウンド・ゼロがある、ということである。
つまりは、喪失なのである。
だから、これらのバンドは、失われた場所の代わりになるものを、
自分たちの手で作り上げることにしたのである。
3バンドに共通する、「どこか別の場所」への切実な憧れとその夢想はそこに由来する。
画期的だったのは、それが憧れや祈りを鳴らすのではなく、
そのような「どこか別の場所」を、
実際に音によって作り上げたことだろう。
そして、それは「ひとの声」によって作り上げられるべきだと信じぬいたことだろう。
彼らにもし「やってはいけないこと」があったとしたら、
それはたぶん、「いままで聴いたことのあるような音=場所」であってはならない、
というルールだったと思う。
なぜなら、そのような音=場所は、
いつの日かまたふたたび、喪失へと向かうものに他ならないからだ。
ブッシュの手垢のついたものは、駄目なのだ。
だから彼らは、突如として変異しなければならなかったのだ。

結果、彼らの音とその作り上げた場所の光景は、
とても肯定的で前向きなものとなった。
そこに、かつてブライアン・ウィルソンが夢想した
「想像上の西のビーチ」のごとき風が吹くのは、必然だとも思う。
ポリリズムが多用される、
トライバルな「別のカルチャー」の空気が支配的なのも必然だと思う。
しかし、彼らが作る音=場所はけっして逃避ではない。
なぜならそれは、まさしくあのグラウンド・ゼロのその上に、
自分たちが再び生まれ、暮らすための音だからである。



歌とは黙祷である 2009.05.20 07:41 1979年に薬物の過剰摂取によってなくなったとされる、
カリフォルニア出身のシンガーソングライター、
JUDEE SILLのトリビュート・アルバムが計画されているようだ。
JUDEEの30年あまりの短い人生については、
あまり幸せなトピックが残されていないのだけど、
遺した2枚のアルバムと今世紀になって発掘された未発表曲は、
いまなお、多くのミュージシャンに(もちろん聴き手にも)
さまざまな福音を与え続けている。

偶然、昨日の朝久しぶりに彼女の
「THAT'S THE SPIRIT」を聴きなおしていたら、
このニュース、だった(前にもこのブログで紹介したけど、
もし人間の尊厳というものが歌になるとしたら、こういう曲のことを言うのだ)。

今年の秋にリリース予定のそのトリビュートには、
ロン・セクスミス、
ファイナル・ファンタジー、
ビル・キャラハン、
ベス・オートン、
グリズリー・ベアのダニエル・ロッセンなどが参加しているとのこと。


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