Beady Eyeの1stソング「Bring The Light」でなぜリアム・ギャラガーは「ベイビー、カモン」と歌ったのか

Beady Eyeの1stソング「Bring The Light」でなぜリアム・ギャラガーは「ベイビー、カモン」と歌ったのか

本日の日本時間19時に解禁されたリアム・ギャラガーの新バンド、Beady Eyeのファースト・トラック「Bring The Light」。アップライト・ピアノが連打され、女性ボーカルが色を添える軽快なロックンロールが伝えるものとは何か。ある意味、オアシス以上に注目を集めること必至のデビュー・チューンに、あのリアム・ギャラガーとて、何かを意図しないわけにはいかなかっただろう。

ニュー・バンドBeady Eyeのメンバーが、ノエル・ギャラガーのいないオアシスであることは誰もが知っている。ほぼすべての曲を書き、サウンド・プロダクションの細部にまで自身固有の職人芸を張り巡らせていたノエルのいない、いわば「居抜きのオアシス」であるBeady Eyeは、だから、誰もが想像するのは、オアシスからノエルを引いたオアシスという、単純な足し算引き算の音だったはずだ。事実、僕もそうだった。しかし、それは違っていたと言わざるをえない。

この「Bring The Light」は、ロックンロールである。オーソドックスな意味におけるロックンロールのメソッドに忠実な、そして、そのメソッドを現代に鳴らすことに微塵の疑いも差し挟まなかった音である。だからそれは、このロックンロールの原理を、さらに堂々と、肯定的なものとして提示している。ここ15年を、いわば「ロックの王道」のように歩んできたオアシスがあたかもモダンにすら感じられる、よりいっそうオールド・ファッションな設計をとっている。

さて、ここであらためてリアム・ギャラガーという存在を思い起こしてみる。稀代のシンガーであり、歴史的なフロントマンであり、現代的なロック・スターでもある彼はしかし、ロック・ミュージシャンとしてどのような作法なり引き出しなりを持ちえているかというと、覚束ないというのが正直なところだろう。彼の歌声はスペシャルだが、彼があらたな唱法をロックに持ち込んだ、とまでは言いがたいし、彼のステージングは独特だが、彼のパフォーマンスがロックのビジュアルに決定的な革命を起こした、とまでは言いがたい。ただひとつ絶対に言えることは、1990年代以降のロック・シーンにあって、リアム・ギャラガーほど「ロックな存在」はいなかった、ということだ。

つまり、リアム・ギャラガーというアーティストにとってのロックとは、その「音楽」以上に、ひたすら「ロックな存在でいること」だったと言える。そして、逆の言い方をすれば、リアム・ギャラガーにできることは、それ、なのだ。

だから、リアム・ギャラガーがリアム・ギャラガーとして全権を掌握したバンドBeady Eyeにおいては、その音はよりロックに、ロックンロールになっていくのが必然となる。というか、リアムはより根源的なロックを纏うことでしか、「オアシスではないリアム・ギャラガー」を表現しえないのである。

「Bring The Light」が伝えるものを、僕はそう受け取った。このナンバーは、リアム・ギャラガーが「もっとロックするぜ」という宣言である。だから、リアムは「ベイビー、カモン」と歌ったのだ。リアムがよりロックに純化していく、そんな大いなる道程の突端に、いまわたしたちは立っている。
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