Weezerはなぜホルゲ・ガルシアをジャケットにしたのか

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Weezerのニュー・アルバム『Hurley』のジャケットには、TVドラマ『LOST』でハーリー役を演じた俳優、ホルゲ・ガルシアの写真が使われている。この写真は、もともと『LOST』のファンだったというリヴァース・クオモが、偶然見かけたホルゲ・ガルシアに記念写真を頼んで撮らせてもらったもので、もともとはリヴァースとホルゲの2ショット写真である(経緯の詳細はこちらのニュースで。http://ro69.jp/news/detail/40345)。その写真から、わざわざリヴァースは自分が写っている部分をカットして、ホルゲのアップをニュー・アルバムのジャケットにしたのである。

リヴァース・クオモが18歳のとき、「ロック・スターになる!」といってロサンゼルスに出てきた話は有名だ。それから数年後、現地で出会った仲間とともに組んだバンド、Weezerはデビューし、いまでは『ザ・ブルー・アルバム』と呼ばれるファースト・アルバムはいきなり300万枚の大ヒットとなった。彼らの最初のヒット・ソングは、「バディ・ホリー」だった。

その後、紆余曲折のあるキャリアではあったにしろ、昨年はフジロックのトリ、今年はレディング&リーズのトリ前と、デビューから15年を経た今もなお、シーンの真ん中で精力的に活動をしている。ここ最近など、毎年アルバムを発表しているのだから、大したものである。セカンド『ピンカートン』後にほとんど活動休止していた頃からは想像もできないことだ。

「バディ・ホリー」もそうだが、Weezerの曲には、よく「他のアーティスト」が出てくる。グリーン・デイのコンサートに行く話があったり、あるいは、カバーも最近は特に定番になっていて、ライブだけではなく、レコーディングしてアルバムのエクストラに加えたりするのも恒例になってきた。

サブ・カルチャーの引用を表現の一部にするアーティストはたくさんいるが、このリヴァースのやり方(?)は、そういうものとも違う。「ロック・スターになる!」といってロックを始めたリヴァースだが、これではただのファンだと言われてもしょうがないのではないか。というか、その前に、しっかりと自分なりの表現方法を確立したアーティストであるリヴァース・クオモが、なにゆえ今なお嬉々としてロック・ファンであることを表明し続けるのか。

「ロック・スターになる!」と願望することは、実際には当の自分がロック・スターではないということである。「キッスみたいになりたい!」とベッドの上で飛び跳ねていたメガネ少年は、口から火を吹いたり、最前列にはべらせたグルーピーを今夜のお供にできないのである(その証拠に、リヴァースは成功後のセカンド・アルバム『ピンカートン』で、いろんな女の子と出会ったけど、苦痛を増やしただけだったという歌、題して「タイアード・オブ・セックス」を書いている)。

というか、そもそもロック・スターはもう生まれないのだ。誰もミック・ジャガーになれないし、デヴィッド・ボウイにもなれない。時代がそれを許さないし、その時代を生きるわれわれにはそれを生きるための何かが奪われているからだ(現代最高のスーパー・スターである、あのレディー・ガガの「必死さ」を見よ)。

そのような時代と、鏡の前に立っているこのような自分。つまりは、「ロック・スターを禁じられた世界と自分」にとってのロック・ミュージックのリアリティとは何かということが、Weezerなのである。それは簡単に言ってしまえば、ごく普通の世界を生きるロック・ファンによるロックへの愛、ということである。

おそらくは最後のロック・スターであるカート・コバーンの生きた1990年代に、リヴァース・クオモは、ロック・スターの去った世界で、われわれと同じようにロックを愛し、切望し、身悶えする「こちら側の当事者」のためのロックを引っさげ登場した。それは、ひとつの画期的な変化を示していた。そしてそれは、だからこそ、ほかならぬわたしたちから特別な愛情を持って支持され続けているのだ。

リヴァース・クオモが、偶然、ホルゲ・ガルシアを見かけた視線は、われわれと同じものである。記念写真を撮ったときの気持ちも、たぶん、同じものだろう。リヴァースは、この写真をジャケットにした理由を、「彼の表情がなんとも素晴らしいんだ。愛と優しさに溢れていてさ」と答えている。付け加えれば、横に写っているリヴァースの顔も、そうだ。リヴァース・クオモは、いつだってこの地点から、ロックを見上げるように歌っているのである。

Weezerがそのホルゲ・ガルシアと共演した映像がこちら。曲は『Make Believe』から「Perfect Situation」。
http://stereogum.com/521711/weezer-sing-with-jorge-garcia-reveal-1st-blinkerton-tour-dates/top-stories/lead-story/
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