今週の一枚 BIGMAMA『The Vanishing Bride』

今週の一枚 BIGMAMA『The Vanishing Bride』

BIGMAMA
『The Vanishing Bride』
2015年2月25日発売



金井、本当によかったね、このアルバムは本当に最高だね、と声をかけたくなる本当に素晴らしいアルバムである。
BIGMAMA、6枚目のフルアルバムにして、間違いなく最高傑作だ。

JAPANのインタビューで金井も語ってくれたが、これまでのアルバムと根本的な構造がまるで違うアルバムである。
ひと言で言うと、作品の主成分が変わった。
これまでのBIGMAMAは主成分=金井の人生と生き様、それを金井シェフの指揮の元、5人みんなで調理していくという感じだった。
本作『The Vanishing Bride』はそうではなく、ミュージシャンとしての5人の才能が均等に材料にされた、主成分=5人の閃き、というアルバムである。
金井が4人のセンスを調理し、4人が金井が提供した素材としてのメロディと歌詞を調理してみせた。その結果、全員の趣味と嗜好が反映された料理が出来上がった。そんな幸せなアルバムなのである。
アルバム全体が放っている空気が躍動しているし、とにかくハッピーなアルバムだ。
また、歌い手としての金井の存在感が素晴らしい。ヴォーカリスト・金井の作品としても最高到達点だろう。
ナチュラルな自信が溢れるような金井の声を聴いていると、彼はBIGMAMAのことをあらためて誇りに思えたのではないか、と思えてくる。

この変化は、メンバーと金井の信頼関係が深まったこと、そして、5人の間に起こった化学反応を発端に、彼をしてそのたくさんの「気づき」を素直に「純音楽的」に昇華したいと願ったことに根ざしている。
つまり、バンドの進化と成長を強く願った、ということだ。
そんなことは当たり前かもしれないが、実はそうじゃない。
「自分」と「バンド」を一度切り離し、「自分」がバンドのために何をしてあげられるのかと見つめ直すこと。それはとても難しい。絶対的な能力と実績を持ったソングライターであればなおさらだ。

しかし、本作で金井はその才能を100%バンドとその先にいる「君たち」のために注ぎ込んでいる。
「僕」のためでもなく、特定の「君」のためでもなく、無数の(あるいは、無数に増えていく可能性を持った)「君たち」のために歌っている。
その変化は、フラットになったアルバムタイトル、歌詞、歌、すべてに現れている。
力強くポップなアルバムだ。
ここには、金井による金井のための音ではなく、5人の関係性が象徴する「誰か」のための音が鳴っている。

BIGMAMAはこのアルバムをもって、もっともっと愛されるバンドになっていくはずだ。

(小栁大輔)
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