イングリッシュ・ローズとは?

イングリッシュ・ローズとは?

日本風に言うなら、いわゆる「大和撫子」なんだろうけど、
現英国における「イングリッシュ・ローズ」はニュアンスがかなり違ってくる。

「大和撫子」が今も「控えめ」「奥ゆかしさ」「たおやかさ」等の「受け身」な美しさを持つ美人を象徴する言葉なのに対し、
「イングリッシュ・ローズ」の場合は「鋭利な知性」や「行動性」「凛とした気品」等の「能動的な」美しさを持つ美人を象徴する言葉としてよく使われる。

子供の頃から親や配偶者に頼らない「自立精神」と「自己尊厳」を叩き込まれて育ってきた英国女性にとって、
日本で言う「可愛い」は決して誉め言葉にはならない。
「可愛い?ペットや娼婦じゃあるまいし、そんな見下すような言い方はやめて。私はあなたと同等の立場で社会を生きていける一人前の女性よ。自分を何様だと思ってるの?」みたいな調子で冷笑されるのがオチ。

筆者もこれまで多くの英国女性と友人関係を築いてきたが、彼女達の人間としての「強さ」、「独立精神」の旺盛さには、いつも目を見張る。
この国は日本と違い、「家計」を握るのはお金を稼ぐ人=(かつては大半の場合が夫だった)なので、
いくら金持ちと結婚するからといって退職して専業主婦に、なんていうコンセプトはほとんどのModern English Girlsの頭にはない。
そもそもは、何か買うたびに「家計を握る夫に頭を下げてお金を貰わなきゃならなかった」のが、プライドの高い英国女性にとっては耐え切れない侮辱だったからなんでしょうが。
現UKでは「働く既婚女性」は珍しくもなんともない、普通のこと。
いわゆる30過ぎのシングル・マザーもごろごろいる。
日本みたいに「行き遅れ、、、」みたいな侮蔑的な陰口を叩かれることもないし、むしろ「よく頑張るなあ」といった調子で同僚や社会に尊敬される。
あのSuffragetteの発祥地ですからね。
男女とも「相手と同等の立場での関係」を何よりも尊重する。
それができない女はむしろ男からバカにされやすい、というのが実情。

というわけで、とにかく英国女性は強い。
子供の頃から自分のことはあくまで自分で解決しようとするし、
12〜13歳頃から、かかりつけの医者に「避妊薬」をもらえる(ナショナル・ヘルス・システムが普及しているので無料)ので、
妊娠した場合もあくまで自己責任。
切羽詰ってから「どうしてくれるの!?」と相手の男に詰め寄ったり、なんて図はこの国の男女関係の場合ほとんどありえない。
本当に子供が欲しい時だけ避妊薬をストップすればいいだけでしょ、それをしないで妊娠したなら自分の責任よ。
というのが通常の英国女性の考え方。
そう、決して他人に頼ろうとしない。

何か問題が起きるとすぐ親兄弟や親戚の指導を仰ぎ、ヘルプを請うのが当たり前な日本社会で育ってきた筆者にとっても、
そうした英国社会における「自立した女性の生き方」に慣れるのに何年もかかった。
18〜19で単身渡英して、自分以外誰も頼る人がいなかったからそうする以外なかったんだけど(冷や汗)。

今日はそんな「強く美しいモダン・イングリッシュ・ローズ」の代表として、
あのキーラ・ナイトリーを選んでみました。

この貴婦人をモデルにした映画のキーラより、
『キング・アーサー』で荒くれ男兵士と一緒に剣を持ち、うぎゃあああああ〜〜〜っ!!!と叫びながら敵側に切り込んでいくキーラのほうがイングリッシュ・ローズだなぁ、と見惚れてしまいますが。
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