“GREATEST VOICE”〜魂の叫び〜、というタイトル通り、往年の代表曲からカヴァー、新作『Fantasia』のナンバーまで、さまざまな角度から彼の声の魅力が堪能できる充実したライヴだった。
国際フォーラムという音響効果の高い場所で聴く河村隆一の歌は格別だ。
「知らない声、未知なる叫び、本当の声を求めてツアーに挑んでいる」とMCで語っていたが、オーディエンスだけでなく、本人自身もそれを楽しんでいる様子が面白かった。

とても印象に残ったのは、“HANA”についてのMC。
震災後の原発問題を自分なりに受け止めたうえで、
幻の花になってしまうかもしれないけれども、委縮せずに新しい花をみんなで大きく咲かせていきたい、というようなことを言っていた。
欲望や想像力をただただ否定するのではなく、原罪を自覚したうえでどのように向き合い、再び新しい夢を描いていくのか、というタフな発想がとても河村隆一らしいと思った。
それは彼が紡いできた歌の根底に流れているテーマでもあり、それを寓話的に表現した新作の“森のRONDO”なども興味深い。

「現実逃避ではないと思う」と本人も言っていたが、『Fantasia』のテーマがライヴを観てとてもよくわかった。
河村隆一はこのアルバムでファンタジーという夢見の力によって、「生きる」ということをいろいろな角度から歌っているのだ。
豊潤な歌を堪能したあと、いろいろと気づきの多いライヴだった。
（井上）