また「モテキ」の話

また「モテキ」の話

昨日、「モテキ」について書いていて、ふと思い出したこと。

子供の頃、マンガを読んでいて、バンドとか楽器の描写が
出てくるたびに、「あーあ」と、いつも思っていた。
『気分はグルーヴィー』のようなバンドを題材にしたマンガや
(あったんです、そういう名作が)、『マカロニほうれん荘』のように
ロックがよくネタになるマンガ(同年代の方だけわかればいいので
説明しません)とか、もちろん江口寿史先生の一連の作品
(これも説明不要ですよね)とかは大丈夫なんだけど、
そうではない、大半のマンガの話です。

つまり。バンドとかよく知らない作家なんだけど、
ストーリーの都合上、バンドが演奏しているシーンを
描かなきゃいけない場合、あるじゃないですか。

そういうシーンがですね、ことごとく、ひどいのです。
「そんなギターねえよ!」と言いたくなる、
ストラトともテレキャスともレスポールともつかぬ、
雲形定規みたいな形のギターが描かれていたり。
シンバルの位置もスネアの位置もフロアタムの位置もデタラメ、
ハイハットなんてもちろんない、「一体これ、どうやって叩くの?」
みたいな、ドラムセットだったり。

1980年代のマンガって、そんなんばっかりだった気がする。
アニメとかも結構そうでした。
そのたびに、子供心に、

バンドに詳しくなくても別にいい。
ただ、なんで、描く時に写真を見ないの!?
あなた、車を描くときは、車の写真、見るでしょ?
バイクを描く時もでしょ?
なんで楽器は見ずに描くの?

と、いつも憤っていた私でした。

今はそんなマンガを描く作家、いません。


という観点から言っても、「モテキ」ってすばらしいとつくづく思う。
前にも書いたように、ストーリーの中で、フジロック・フェスが
重要なキーになっているんだけど、そのフジの絵がまず、すばらしい。
1巻と4巻に出てくるんだけど、特に1巻がよいです。

実際のフジと同じように描く、というのは、写真や映像を見れば、
プロなら可能だと思うんだけど、たぶんそれだけじゃない。
「あ、この人、ちゃんと現場に行ってるわ」って感じがする。
ペンの動きっぷりがリアルなだけじゃなくて、
「俺ら参加者って、会場のこのへんの、このステージのこういう場面って、
こういう角度で、こういう目線で、こういう気分で見るよね」という、
アングルの切り取り方まで含めて、リアルなのだ。

という、絵のリアルさもすばらしいが、それ以上に、
そこにおける登場人物たちの行動や気分、
そのリアルさもすばらしい。
これ、取材目線だったら、まず描けないと思う。
つまり、「マンガ家が取材で行った」のではなく、
「フジに参加したロックファンの職業がマンガ家だった」
ことが明らかに作品に出ているところが、
とても、いいなあと思うわけです。

とりあえず、フジで後ろからハグしつつされつつ
ライブを楽しむカップルを見て「くっそお」と思う
主人公藤本の目線は、イコール、作者久保ミツロウの目線だと思う。
そしてそれは、ここ数年、フジといえば朝から明け方までひとりっきりで、
ほぼ誰とも口をきかず、会場を移動しまくりながらブログをアップ
し続ける、私の目線でもあります。

あ。ドラマ「モテキ」、フジのシーン、どうするんだろう。
7月16日放送スタートだから、フジでロケとか無理だし。
ばっさりカットなんだろうか。それとも、フェスじゃない
何かに置き換えてるんだろうか。

それはそれで、どうなってるのか楽しみです。
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