ペット・サウンズというファンタジーの凄さ。完全再現ライブを観た

ペット・サウンズというファンタジーの凄さ。完全再現ライブを観た

失われた記憶、失われた夢、失われた愛。そんな「喪失」のもともとの姿をひとつずつ手繰り寄せようとするのを見ているかのような、途方もない体験だった。『ペット・サウンズ』完全再現ライブ。

例えば〝神のみぞ知る〟でぽつんとスポットライトを浴びるブライアン・ウィルソンはしかし、初めから喪われていたものを取り戻すことなんてできないという当然の事実を突きつけているようにも見えた。それが、眩いメロディとハーモニーによって、何重にもアイロニーを湛えて響いてくるのだ。

リリースから50年になるが、10年代の現在に至るまですべてのディケイドにおいて音楽だけでなくポップ・カルチャーのなかでも受け継がれ表現されてきた、ペット・サウンズという「概念」。ある時にはメインストリームに躍り出、またある時にはカウンターカルチャーの文脈で継承され50年が経ってもなお、世界中の様々な所に種が蒔かれ花が開いている。

このアルバムが普遍のポップ名作である所以をまざまざと思い巡らされるライブだった。

4月30日発売のrockin'onで特集します。詳しくはまた。
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