死ぬまで映画で反逆し続ける男たちがいる

死ぬまで映画で反逆し続ける男たちがいる

本日発売のCUTに掲載している編集後記をアップします。
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 今月、観た映画で個人的に最高だったのは、レオス・カラックスの『ホーリー・モーターズ』とハーモニー・コリンの『スプリング・ブレイカーズ』だった。実は、2本とも観る前は少しだけ心配だった。どちらも本人たちの生き方も含めて大好きな監督であり、映画として好きになれないことは絶対にないという確信はあった。しかしレオス・カラックスは30年間で5本しか長編を撮っておらず、この『ホーリー・モーターズ』は前作『ポーラX』以来13年ぶり。ハーモニー・コリンが、最近はコンスタントに撮っているが前作『TRASH HUMPERS』はホームビデオ風の画質で老人の仮面を被った男たちが反社会的な行為を続ける様を描いた、アンチ・コマーシャリズムの極地のような作品で日本未公開。いずれもこれらの最新作が2013年という時代において「この映画をみんなに絶対に観てほしい」と薦められる映画なのか確信が持てなかったのである。しかしふたりとも今という時代への痛烈な批評として、これまでの彼らの作品とは趣が違う映画を今回、作り上げていた。
『ホーリー・モーターズ』は、52歳という人生を大きく俯瞰して見られるような年齢を迎えた彼が、自らの経験から身を切るようにして現代において「人間性」とは何かを暴いた作品だった。「この哀しさを忘れるな」と、これから人生を生きていく私たちに強く訴えかける映画だ。
 一方、『スプリング・ブレイカーズ』は現実の残酷さをきちんと背景に描きながら、モラルをブッ飛ばして欲望の中の正義を徹底的に肯定した作品だ。こちらはせつなくもイケイケな映画。40歳にしてビキニの女子大生に憑依して現代の退屈さとまだまだ闘っていこうとしているハーモニー・コリン、元気である。
 というわけで、ふたりとも特に新しいスタイルを提示しているわけではない。しかし映画という、彼らにとってのエレキギターを武器に死ぬまでロックな映画を撮り続ける意志がどちらの作品にも漲っていて最高だった。(古河)
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