マニック・ストリート・プリーチャーズ、『エヴリシング・マスト・ゴー』再現ライブ東京公演を速報レポート

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今年で結成30年を迎え、5月にアルバム『エヴリシング・マスト・ゴー』の20周年記念盤をリリースしたマニック・ストリート・プリーチャーズが、同作品の再現ライブ・ツアーを開催している。

RO69では、昨日11月8日(火)に行われた同ツアー初日、東京公演のオリジナル・レポート記事をお届けします。

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【マニック・ストリート・プリーチャーズ @ 新木場スタジオコースト】

マニック・ストリート・プリーチャーズの約1年ぶりとなる来日公演は、事前の予告どおり『エヴリシング・マスト・ゴー』の20周年を記念した完全再現ライブとなった。そして同時に事前の予想を遥かに上回る、本当に素晴らしいライブとなった。事前の予想自体めちゃくちゃ期待値が高かったにも拘らず、それを余裕で超えてくるパフォーマンスを観せてくれたのだ。

『エヴリシング・マスト・ゴー』から20年の歳月を経た今のマニックスだからこそ可能だったパフォーマンスだった思うし、さらに言えばそれは25年以上にわたってバンドをやり続けてきた、信じられないような悲劇や危機に見舞われながらも諦めなかった彼らだからこそ生み得た説得力であり、そんなマニックスの信念と決意がどのアルバムよりも深く刻まれているのが『エヴリシング・マスト・ゴー』であったことを、改めて再認識させてくれた一夜だった。

ショウはこちらも予想通り完全再現の1部とエクストラ・セットの2部からなる2部構成で、オープニングは『エヴリシング・マスト・ゴー』の1曲目“Elvis Impersonator: Blackpool Pier”で幕を開けた。ピンスポの下でのジェームスの弾き語りで始まった本曲、そしてジェームスの「オゲンキデスカトキオー!」のかけ声と共に一気に“A Design for Life”に雪崩れ込む。ライヴのクライマックスの定番であるこの曲が開始5分で早くも鳴ってしまうという過剰さに、「こっちの身体が追いつかないのでは?」という心配は全くの杞憂で、マニックスのライブの阿吽の呼吸を熟知したオーディエンスによって見事に熱が打ち返されていく。セカンドコーラスの一語一句違わぬ大合唱、フロアが波打つような恒例のホッピングもいつもより激しかったくらいだ。

“Kevin Carter”ではアルバム音源を忠実に再現するべくトランペットも加わり、さらに分厚くダイナミックな音が打ち出されていったわけだが、当然のことながら昨年サマーソニックでの『ホーリー・バイブル』再現ライブと今回では出音も意味性も全く異なるものだった。94年当時のマニックスを覆っていたひりひりしたムード、彼らが最も尖り乾いていた時代のリアルを今に蘇らせたのが『ホーリー・バイブル』の再現だったのに対し、『エヴリシング・マスト・ゴー』の再現はむしろ2016年ヴァージョンとしてきっちりアップデートされており、彼らがその後20年をかけて積み重ねてきた経験や技術の全てを惜しみなく注ぎ込んだ最新にして最高のマニックスの証明の場に他ならなかったからだ。

キーボード、ギター、トランペットと3人以外のサポート・メンバーも、ステージ下手に空いた「リッチーの場所」に萎縮することなく十二分に役割を全うし、ポップ・ソングとして高度に完成された『エヴリシング・マスト・ゴー』のナンバーのより効果的なプレゼンに寄与していた。すごくヘルシーで前向き、今・此処の肯定感の中で思いっきりラウドでエモーショナル、そしてメロディアスな楽曲群が生き生きと色づけされていくのだ。

特にアルバムの“The Girl Who Wanted to Be God”や“Removables”はボーカルの旋律に付き従うキーボードがジェームスのソングライティングを際立たせていた。改めて「『EMG』って、むちゃくちゃポップ・アルバムでもあるんだよなあ」と感じ入ってしまった。逆に“Australia”や“Interiors”はダブル・ギターのザラリと重いノイズが効いていて、彼らの遺伝子にはピストルズやクラッシュと同時にガンズやモトリーもいたことを再確認する流れだ。

「この曲は日本だけでシングル・カットされたんだよね」とニッキーが言って“Further Away”へ。ショウの中で幾度も日本と日本のファンに感謝を述べていたこの日の彼らだけれど、本国ではほぼ色物扱いだったデビュー当時からずっとマニックスを応援し続けてきた日本のロイヤルなファンのことを彼らは忘れていないし、いずれにしても20年、25年を共に歩んできたことに対する彼らと私たちファンの感慨が幾度も交差したショウだったことは間違いない。

ラストの“No Surface All Feeling”までの全12曲、最新&最高の演奏と共に蘇った『エヴリシング・マスト・ゴー』を今回のショウで改めて体感して思ったことは、「あの時代」にこんなアルバムを作れてしまったマニックスの凄さについてだった。20年前、リッチー失踪後の絶対的危機の中で制作されたこのアルバムは、普通に考えたら当時の彼らの哀しみや絶望、虚無や自己憐憫が直反映された一枚になったとしても仕方がなかった作品だ。でも、彼らはそうはしなかった。代わりにこんなにも力強く、逞しく、メロディアスで、ポップですらあり、そして喪失の苦みや切なさと温かな吐息と優しい眼差しが混在したアルバムを作ったのだ。こうしてやり続けてきた彼らの姿自体に勝る説得力はないと思うし、『エヴリシング・マスト・ゴー』を作ったことで、その後20年分の道が切り開かれたのだとも思う。

さて、そんな感動の第1部のフィナーレと共に第2部に向けて一息付く……かと思いきや、ジェームスはアコギ片手にステージに残り、そのままノンストップで第2部が始まってしまったのには驚いた。2部構成のライブというものをこれまでにも多く観てきたが、合間でブレイクを入れずにシームレスで2部が始まるという展開は個人的にも初めてだ。

「次の曲はプレゼントだ、歌詞を覚えているか不安だから一緒に歌って欲しい」と言って“Stay Beautiful”、続く“Ocean Spray”と2部の冒頭はジェームスの独壇場だった。本当にこの人のスタミナは驚異的だ。ステージ上の誰よりもエネルギッシュに歌い、弾き、動き回っているのに、後半に行くに従って片足でクルクル回り続けるトレードマークの独楽ダンスはスピード&回転数共にますます絶好調、シャウトも高音も全く掠れることなくこちらも万全だ。ニッキーやリッチーの高度な文学性、その言葉の力に血肉を与えていくのがこのジェームスの頼もしき肉体性であり、マニックスならではの絶妙のバランスだ。

ニッキーがジェームスを「俺たちのギター・ヒーロー」と紹介して始まったお約束の“You Love Us”も最っ高!だったが、この日の2部が素晴らしかったのは単なるベストヒット・セットではなく、随所でレア曲も飛び出すサプライズがあったことだ。コアなファンが集った久々の単独来日に相応しい、長年のサポーターたちに向けたプレゼントのようなものだったのかもしれない。なにしろ久々の“A Song for Departure”、そしてなんと“Born To End”もやってくれたのだ!

ラストは「リッチー・ジェームス・エドワーズ」の名前に捧げられた“Motorcycle Emptiness”。感無量とはこのことだろう。マニック・ストリート・プリーチャーズと私たちファンの、この20年をサバイブした「同志」としての共鳴、そしてこれからの5年、10年に向けての新たな「約束」、そのふたつを強く感じさせたラストだった。(粉川しの)

<SETLIST>
01. Elvis Impersonator: Blackpool Pier
02. A Design for Life
03. Kevin Carter
04. Enola/Alone
05. Everything Must Go
06. Small Black Flowers That Grow in the Sky
07. The Girl Who Wanted to Be God
08. Removables
09. Australia
10. Interiors (Song for Willem de Kooning)
11. Further Away
12. No Surface All Feeling

2nd Set
13. Stay Beautiful
14. Ocean Spray
15. You Love Us
16. You Stole the Sun From My Heart
17. Walk Me to the Bridge
18. Your Love Alone Is Not Enough
19. A Song for Departure
20. If You Tolerate This Your Children Will Be Next
21. Born to End
22. Show Me the Wonder
23. Motorcycle Emptiness
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